4度目の訪問。だいぶ肌寒い。まずはワイナリーへ。
イヴァンのいつものセリフ 「ワイン造りはブドウ作り。畑の仕事が90%。だからここでやることはほとんどない」
仰せのとおりでございます<(_ _)>
今年はこんなセリフも。 「ワイナリーでの仕事をなるべく減らすために、畑でのぶどうの状態をそのまま、持ってくることが大事。なるべくそのままを壊さないように…」
今年変化が見られた点その①
セメントタンクが増えていて、積極的に使っていくらしい。樽使用はどんどん限定していくつもりとも。今、バリックを使っているのはメルロだけ。セメントタンクのいい点はステンレスタンクに入れることにより若干失われていた香りと色が維持されること。
その②
イヴァンが自信満々。10年たちビオディナミコのことがわかってきた彼ら。最近はワインもとてもよく売れてほとんど残っていないよと嬉しそう。いろいろ悩んだけれど、畑のスタッフを含めていいチームになってきた。これからがスタートだと思うと言っていました。
発酵時に温度管理をしていないので、発酵前とボトリング直前に少しだけSO2を添加している。
理想は解放樽で屋外で、空気と日光で発酵させたいのだけどね。とも。さらっと書きましたが、すごいことです。
でもイヴァンならいつかやりそうだな。まさに現代のワイン醸造論に逆行した考えだけれど、ブドウが健康ならできるに違いない。
【畑にて】今回は到着が夕方になり畑歩きはほんの少し。ここのブドウたちは、いつも元気でのびのびしている。そして見渡す限りの森とオリーブに囲まれて安心しきっている。植生は海沿いにあるものと全く一緒。海からは結構な距離があるのに不思議なことです。畑は砂浜のようにさらさらっとした砂地土壌。イヴァンによるとブドウの熟成が早いエリアで、ワインもすぐにまろやかになる。長期熟成には向いていないのかと。
畑ではプレパラート500やマメ科の植物をはやして土に混ぜ込むなどで栄養としていて、動物系の栄養は使わない。有機分が多すぎるとエレガントさを失う!とも言っていた。多ければ多いほどいいのかと思っていたので意外な発言。モンタルバーノのエレガントさはここからくるのかな。
畑で聞いた面白い話。
イタリアのビオディナミコワインを評価する雑誌があって、過去最高点に輝いていたこともあるカスッテリーナ。ここ数年は興味がなくなったらしい。「だって審査に出品するために、未完成なワインを送ることもあったんだ。そんなの不自然だろ? 審査してもらうためにワインをつくっているわけじゃないからね。タイミングがあえば送るけれど、もう重要視はしていないんだよ」
おお~自信たっぷりだな。でも共感できる。自信がついてイヴァンから力が抜けた感じがする。
「いつも正直でありたい」とも言っていました。
通常より2週間遅く摘んだサンジョベーゼをリゼルバにするという話の流れから、普通のワイン造りは熟すだけブドウを熟して、当然下がる酸は醸造で補てんする。そういうことをしたくないからね。と。
ホント、正直なワインだけ飲んでいたいものです。
【試飲】
宿泊するハウスの前に広がる芝生で試飲。
つまみに用意してくれた窯焼きパンと、ここのオリーブオイルが抜群。これから夕食とわかっていても手がのびる。
オリーブの樹は6種あって、すべて手摘み。その種類ごとに製品にしている。すべてキャラが異なるから。収穫したら4時間以内にプロパティ内にあるプレス場で圧搾。のどにはりつく濃厚さと、ピリッと辛い後味で塩やパルミジャーノをいれなくても十分に満足できるオイル。なぜ日本でこれが食べれないのかな?頑張れ片岡物産!
① SOLARE 2013(vermentino100%)
2013年は涼しかったのでアルコール度数低めとイヴァンの解説をききつつ。
とても爽やかで塩っぽい。余韻はかなり長い。今までのややヘビーなソラーレの印象を覆す味わい。簡単にいえば私の好みに。合わせたい和の食材がつぎつぎと頭をよぎる。
雨が降ることでエレガントさが増すことがわかったよと言っていた。通常は8月15日頃に収穫するが、2013年は9月初旬に収穫。
②IPOGEO2011 (Sangiovese (50%) Syra (20%) Merlot (20%) Cabernet f. (10%).)
友人の間でも評価が高く、人気の高いワイン。
リーズナブルなワインを造る取り組みで生まれたワイン。でもブドウ作りやワイン造りは手を抜いてないよ。安いけれど高品質だとイヴァン。お買い得ってことですね。
ドライフルーツのイメージ+香ばしさを感じる。IPOGEOは大地の香りという意味。
2012年、2013年のイポジェオを早く飲んでみたいな。
③ CHIANTI MONTALBANO 2012 (Sangiovese100%)
大好きなワインの登場。私はどうもカベルネSやメルロが苦手みたい。サンジョベーゼ大好き!
2012年は収穫の最中にも雨が降ったので、アルコール度数は低いが仕上がりはエレガントになったと。また7月は40℃近くまで気温が上がることがあったが9月には下がり落ち着いた。
まだまだワインが落ち着いていなくて、いろいろな要素がとがっている感じがするけれど、ここのワインに総じてあった、まったり感が薄らいで、ジューシー感が増している。ますます楽しみ!
④ CHIANTI MONTALBANO 2011(Sangiovese100%)
すべての要素が溶けてひとつになり、まろやか~。バランスがよく口にいれていることがすでに心地よい。
誰が飲んでも納得のキャンティ。すばらしい。
⑤CHIANTI RESERVA 2011 (Sangiovese100%)
2年以上2000リットルの大樽で熟成させたサンジョベーゼ。2週間の遅摘み。2006年が初リリースで2007年、そして3年空いて2011年。本当にいい年しか造らないのね。
震える旨さ。ここまでくると何か食事と合わせないともったいない気がしてくる。のちほど堪能したのだけれど…。
2006年、2007年のリゼルバを少しおいてから飲んだけれど、確かにここのワインは少し早目に飲み頃を迎えるのかもしれないな。
⑥Terra e Cielo Cru Alberello 2009( Sangiovese alberello vineyard100%)
古代式いや、もしかすると最先端仕立ての畑のサンジョベーゼだけで作られた特別なワイン。
香りのアタックは強め。ツンとくるスパイスや果実、ナッツの香り。探ると、とても複雑な香りがつぎつぎとあらわれる。味わいも同じく、いろいろな味が少しずつして楽しい。タンニンは細かく、が存在感はある。ワインの骨格である酸もきちんとしていて偉大なワインだど知らされる。
⑦DAINO BIANCO( Merlo100%)
久々飲んだダイノビアンコ。スキンコンタクト30日~40日、バリック中古樽で最低1年~3年も寝かせているのか。それにしてはリーズナブルかも。
美味しい。本格的。これを嫌いなワイン愛好家はいないはず。香りがとにかくふくよか~。これを飲むと和三盆で作られた上質な和菓子を思い出し、それを話していたら耳ざとくイヴァンがTakeに「例のあの日本の砂糖のことを話しているな!以前もダイノビアンコを飲んで同じことを言ってたぞ」と突っ込み。う~んもっとキーワードを増やさないと、ワンパターンな奴らだと思われてしまう。でも、本当にこのワインを飲むと和三盆を強烈に思い出すのよね~。
【食べる】さあ、ここでファビオの登場。一通り試飲も済ませ、ファビオの車に山田さんと乗り込む。英語の全く通じないファビオ相手に恐怖のイタリア語ぶっつけ本番体験15分をこなしつつ、昔水車小屋だったという雰囲気たっぷりのレストランへ。
広いレストランで100席以上ゆうにあるらしい。入口付近で生ビールの樽を発見!すかさず“ビーラ・ア・ラ・スピーナ”を注文。ワインもいいけど、イタリアはビールもおいしい。
ここの名物はスペルト小麦のピザとフィオレンティーナというステーキだということで、あとは野菜をお願いする。
ピザも野菜もすこぶるうまい。店が激混みなのもわかる。塩味で生ハムがのったピザがとても印象的だったな。東京にも同じようなピザはあるけれど、生地の味が違う。小麦が違うんだな、きっと・・・。生ハムも東京のは変に硬いか、しょっぱいか、脂っぽいか。ここのはどれでもなく、柔らかくて食べやすく塩加減も絶妙で、それだけが口の中を独占しない。もちろん脂っぽさなど微塵もない。
そしてこのステーキ。画像がすべてを物語るように、表面はクリスピーで香ばしく中身はジューシーな肉汁にあふれている。すごい。しかも大きさは約40センチ×15センチ、高さ5センチ。これを炭火で焼いているだとしたら、相当な腕前。ビステッカ・フィオレンティーナはTボーンステーキのことで肉はキアナ牛という種類。
でも一番驚いたのは、このクオリティの料理をこのファミレスのような雰囲気で出すこと。たくさんの家族が子供連れでワイワイ、ガヤガヤしながら楽しそう。子供のころから舌が肥えそう。
さて、料理の合間に話したファビオの言葉をどうぞ。
まずワイナリーで会ったときになんか感じた彼の変化。いつもより明るい陽のオーラ。
理由がわかりました。奥様とは別居して、別の女性と二人で暮らしているらしい。「アイムハッピー」だって。
よかった(^^)
ファビオと話すのはもちろん畑であったり、ブドウのことであったり、ワインのことであったりするのだけれど、
なぜかそれは精神論や人生論にオーバーラップされて私の心に突き刺さります。
不思議な人なんですよね。
カスッテリーナが本格始動して10年。今、当時と生えている草の種類が違ってきているといっていました。
畑でおこるすべてのことに意味がある。意味のないものはないといっていい。
おこる時期にも意味があるのだという。昔より深く根を下ろす植物が増えてきていて、それは土が固くなろうとしているのを自然が感じて、それを緩和させるためにその植物をはやさせているのだと思っていると。
今まで見てきた3つの蔵元にも共通してあった下草の話。ファビオの考えはさらにその先を行き、カスッテリーナという世界をとても高いところから見ているなという感じ。でも支配者はファビオではなく自然そのもの。ファビオは偉大な管理人。
“セルフィカ=エネルギーの調和”を農法に取り入れているそうで、話が難しくなりTAKEも訳しにくそう。これも今までの蔵元で言われきた植物多様性の一歩先を行く考えなのかな。それとも大きく過去に戻っているのかもしれません。
「ワイン造りにゴールはない。いかに自然と生きていくかを日々考えていえる。今日最高だと思ったことも、明日には違うものに見えてくる。運命は決まっているが、それを予想することはできる。すべてのことに意味があるから」
美味しい肉をほおばりながら、泣きそうになったよ。
★ちなみにカスッテリーナのファームハウスはとても古い重厚な造りで、
はっきり言って出る。怖い。鳥肌がたつ。ここに泊まって眠れたことないんですが、今回は部屋飲みしたので、それなりに怖かったけれど眠れました~。