マリオーザでの濃い時間が過ぎ、車はヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノへ。ワインを勉強した人ならすぐわかりますが、ここであえて復習。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノはDOCGワインの中で最初に認定された3つのうちのひとつ。残りはバローロとブルネロ・ディ・モンタルチーノ。モンテプルチアーノとモンタルチーノは似ていて言い間違えしやすいので要注意!教科書で習うとプルニーリョ・ジェンティーレという品種が70%以上使用されていることとなっていますが、それ、平たくいうとサンジョベーゼです。まあブルネロもサンジョベーゼの1種なので、それぞれの土地に根付いてその土地の特徴を表したサンジョベーゼがいろいろあるのだと理解してください。
マリオーザからは小一時間の距離。ここでもクイックにTAKEの解説をききます。エルマンノさんは元々、日本でいう道路公団にお勤めで、奥様の実家はホテル業を経営。今夜の宿です。
そして奥様のお父さんが作ったブドウ畑を引き継ぎ、ワイン造りを始めたのが数年前。ファーストヴィンテージは2012。「じゃあ、もう公団の仕事はやめたのね?」という疑問ですが、イタリアの勤務体制は自由がきくらしく、今も兼業。しかもアグリツリズモまで経営しているらしい。息子も数年前に会社勤めをやめてファミリービジネスに参加、いろいろ切り盛りしている。ふむふむ。
ところで途中、ウンブリアの有名な町オルヴィエートを望む高台を通りました。素敵な城壁の町で、せめて写真だけもとちょっと下車。ポーズの後、そそくさと車に乗り込みさらに進みます。
待ち合わせの高速出口についた頃はもう日が暮れそう。8時過ぎです。当主のエルマンノさんと、息子さんのアンドレアが出迎えてくれました。この人たち、とびきりの笑顔の持ち主。まるで20年来の旧友に再会したかのような人懐っこい笑顔と熱い握手。いっぺんで大ファンに!
そのままアグリツリズモへ。
車をおりようとすると「犬は大丈夫ですか?」とアンドレア。大好き♡、問題ないといい終わらないうちに黒い大きな物体がどーんとやってきました。
“ブルコ”登場です。
若いボクサーのオスで、もう元気、元気、エネルギーの塊。ブルコの案内で、脇にある小さな畑へ。ここは0.5ha。この古民家を買ったときに一緒についていたらしい。2010年に植樹したのはサンジョベーゼとコロリーノ。
一枝に5~6房つくように最初から剪定してしまい、あとは何もしません。と笑顔で話すエルマンノ。キャンティは凝灰岩と砂土壌で、ここは粘土土壌なので、すこし地力が強いのかな。
畑で恒例の写真撮影をした後は、自慢のアグリツリズモの見学。なんでも部屋のデザインから、簡単な家具作りまですべて自らやってしまうエルマンノ。まず目につくのはエトルリア人の墓!家の中に墓!?
なかなかシュールです。
そしてお部屋はすべて違う内装とコンセプト。素朴でオシャレ。センスよいなこのおじさん。
さらにブルチャータショップです!と紹介された棚には様々な製品が。ワインはもちろん、グラッパ、ヒヨコ豆、レンズ 豆、古代小麦のポン菓子や、噂に聞く極上オリーブオイル、そして何ともおいしそうなリモンチェッロまで。
買いたいよ~。買いたいよ~。とバーゲンさながら商品を手に取るも、TAKEに慌てるなと制止されます。
ダイニングも買い取った時のままを、なるべく残して味のある空間。部屋の入り口には何やら穴あき丸マットが、と思ったらオリーブを圧搾するときのフィルターを模したものだそうで…へえ初めてみた。
外にある巨大な石で造られたBBQグリルはもちろん!?エルマンノの手作り。畑の脇にゴロゴロしているらしい。しかしこんな石どうやって運んだのだろう?しかも何時間かけて削ったのかな?この人1日何時間あるのかな?
だって、公団で働き、ブドウ作り、オリーブづくり、豆とかもたくさん作って、家具も作って、ホテルもやって。
しかもブルコの散歩も?スーパーマンだな。
さあ、いよいよホテルにチェックインして待望の夕食&テイスティングです。
【食べる&テイスティング】
ホテルは想像以上の大きさで、またびっくり。こんなホテルがありながら、アグリツリズモも開いたなんて。
奥様登場です。中尾ミエをかわいらしくした感じで、彼女の笑顔もこれまたすごい。オープンマインドなのが、一目でわかる。
すでに9時半。遅い夕食です。
まずテーブルにつくと用意されていたのは、
①新鮮な野菜の盛合せ+2種類のオリーブオイルの食べ比べプレート
画像の右にあるのが、生のアーティチョーク。人生初体験です。この年になっても初体験ができるなんて海外ならでは。フヌイユも苦味があっておいしい。オリーブオイルは色が濃い。緑がすごい。これも飲めそうです。緑ラベルが単一品種でブルーがミックス品種。
②次に焼き野菜やレンズ豆、ひよこ豆を煮たものや、チーズ、そしてブラッドオレンジなどが大皿で用意されていて、それらを少しづつブッフェスタイルでいただく。
あまりの美味しさに写真撮るのを忘れます。
③さらにお約束のパスタ!あ~・・・・・言葉になりません。
ピチという名前のパスタらしい。トスカーナのシエナ発祥のパスタでまさに地元。
紀元前八世紀のエトルリア時代から食べられていたらしい。
ちょっとうどんみたいですけど。
④そして出た~この旅2回目のフィオレンティーナ。がお腹がいっぱいで2切れがやっと。くやしい。今度は野菜とこれだけでいい!なぜか3枚もテーブルに並ぶ。肉が苦手な私ですが、美味しいと心から思えるステーキでした。
⑤お腹いっぱいなのに、デザートは別腹でリコッタにハチミツを練りこんだような口どけスイーツ。
お伴は自慢のグラッパで。
ワインは以下のとおり。今秋に日本上陸予定?日本でどんな表情をみせるのか。楽しみです。
Barcaiolo – Chianti Colli Senesi
顔のラベルが印象的。今回の夕食では一番最初に出されました。
生野菜ともいけるグイグイのめるワイン。
旅疲れだった私には一番おいしく感じられました。
Ermete – Rosso di Montepulciano
キリンビールのラベルそっくり。
思わず画像みせたけれど、エルマンノはそうかなあ?
という表情。
ワインは濃いけれどこなれ感がすごくあって、まろやか。
サンジョベーゼ92%、残りはプティベルド、カベルネ、コロリーノなど。
Cesiro – Vino Nobile di Montepulciano
さすがの重厚感。
でも口にすっと入る角のとれた感じが共通。
これが初ビンテージだなんて、ちょっと驚き。
最初からこんなにこなれ感って出せるのだろうか?
Tizzo-Rosso Toscano
もう在庫なないんだけど…といいつつ開けてくれた
ティッツオ。これも顔。ここのラベルはどれもインパクト大。ちなみにキャップシールにはブルコがいます♡
夕飯も大方済んで、ブルコも再登場し、お土産タイム!ご機嫌に手ぬぐいをまく親子。
実はお嬢さんもいて、今イギリスに留学中とか。彼女が帰れば英語も完璧だから、
もっと話がしやすくなるわねって。
なんだか、心底うらやましくなってしまったモンテプルチアーノの夜でした。家族っていいな。
【ワイナリー&畑にて】
本当は昨日のうちに終了するはずだったワイナリーツアー。夜がきてタイムアップし、翌日に持ち越されました。
美味しい朝食を堪能し、ホテルの外でエルマンノを待ちます。
簡単なヨガで精神統一をしていると、中尾ミエことカティアが来てやりたそう。片言のイタリア語と英語でなんとかコミュニケーションをとりつつ教えます。
ちょっと太り気味ですが、バランス力はなかなか。案の定、膝と背中が痛いそうで、おすすめのストレッチなどを伝授します。話すうちに意気投合。次回は彼女むけのプログラムを用意して畑や温泉などのパワースポットでヨガろうと約束。ここら辺は温泉地としても有名だとTakeが言っていましたっけ。魅力的だ。次回は我が家へ泊まりなさい。その代り私が東京へ行ったら泊めてね。あ~本当にそんな日がくればいいな。またまた家出の行き先が増えました(^^)
聞けばTakeも初対面の日に、なぜか泊まることになり、この家族の明るさに驚いたそう。イタリアでもこの土地の人はとびきり明るくて、オープンマインドなのだそう。きっとワイン造りにも影響しているはず。
エルマンノが来て、ホテルの裏手へ。あれ?ここは私の部屋から見えた倉庫では?ここがワイナリーだったのか。
奥様のお父様が昔つかっていたところを再利用。本当に小さい。
小さいながらもセメントタンクがどんとあります。入口の大きさに合わせて発注したらしい。
温度管理はなし。マリアボルトロッティ同様最初にスターターを作って発酵を促進しています。ゆっくり、ゆっくりと発酵させ、その時点でSO2は加えません。皮からすべてが取り出されるのを待つそうで、タンニンがしっかり出てくることで抗酸化作用を持ちます。これはパオロさんも言っていたことですね。
マロが終わったあとにオリ引きし、タンクを変えるときはじめて少量のSO2を添加。
「これがSO2だよ」と指差したところにあるのは、食べかけのお菓子か!と言いたくなるような無造作な感じで輪ゴムで縛られた使いかけの袋。
本当にちょこっとしか使ってないのがわかります。もっているところは小麦粉の大袋みたいなものを何袋も大量においてありますからね。全量で20㎎以下だそうです。
タンクから試飲します。
☆ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ2012
すでにとてもきれいに澄んで、このままでも行けそう。
☆ロッソ・ディ・モンテプルチアーノ 2013
花のような香りが押し寄せ、細かいタンニンはすでにとけています。うん、いい!
早く完成品が飲みたい。
☆ロッソ・ディ・トスカーノ(テイッツオ)2013
ほかに比べて強い。350本から1000本と言っていたので、売ることよりも飲むことを意識して造っているのかなと思います。
それにしても、ファーストリリースからワインの味がとても落ち着いていて、こなれている。エルマンノに尋ねると…
「パッションだよ、理想があるんだ。情熱さえあれば何でもできるということさ」
「自分が飲みたいと思うワインを造っているだけ」
とのお答えでした。(^^)
ちなみに、タンク試飲のワインを吐き出す容器がなく、
外や床に吐き出します。これは普通のこと。
私はシンクを見つけそこへ。
一通り試飲が終了すると、まず試飲につかった容器を
シンクで丁寧に洗い、デッキブラシを持ち出して、床を掃除し始めます。この清潔さがSO2少量でもいける大事な要素。わかってはいるけれど、感心してしまう光景でした。
さあ、畑へ移動します。
【畑にて】
メインの畑はしゃべっている舌をかみそうな凸凹道を通ります。当然黙ります。
彼らの住む家もすぐそばにあるらしく、カティアがしきりに来てね♡と言ってくれ、本気で来ようと思う私。
畑の入り口には、本当に大きな岩がごろごろと。これを運んでBBQ台をつくったらしい。
ヴィーノ・ノービレが見渡せる標高600メートルの丘の上です。
サンジョベーゼを9月末、モンテプルチアーノは10月初旬に収穫、その1週間後はプティ・ベルド。
この時期は毎年あまり変わらないと。標高が高い分、周辺の畑よりゆっくり熟す。
畑のトータルの広さは2.5haでこじんまり。でも、兼業ですからね。
ここも今年は冬があまり寒くなく、よって虫の活動が活発でモニタリングしているそうで、粘着性の紙に小さな虫がくっついていました。
さらに、ぶっつり切れた枝もあり、それは鹿が食べちゃうらしい。
鹿もよく知っていて、隣の農薬バンバンの畑は素通りし、ここへわざわざやってきて食べていく。賢い。
オリーブの樹もブドウ畑を囲むようにたくさん植えられています。あの強烈な緑は、すこし青いうちに収穫して発色をよくさせているそうで、朝収穫して夕方には圧搾するらしい。
今は酸素と一切触れることなく搾汁できる機械があり、10月中旬に毎年ヌーボーができるみたい。
出来立て、しぼりたてを一度味わってみたいものです。
当然のことながら、ここも植生が豊かで、森が半分以上を占め、自然のパワーに満ちた場所。ここで働けることが喜びだとエルマンノが満面の笑みで言っていました。
名残惜しい人たちともお別れの時間。旅の最後にこんな場所がまっていたなんて、 Takeもなかなかやりますな。朝一でローマへ向かうはずが、昼近くの出発に。
ここからローマは2時間くらいの距離です。