おまけ2 ローマ最大のスーパー
July 2nd, 2014
スーパーのなかでピアノ生演奏あり!

スーパーのなかでピアノ生演奏あり!

せっかくローマに来ましたが、観光も行かず市場調査。
最近代官山の店が閉店したみたいですが、ローマの店は活気あふれ、人もあふれていました。
①とにかく広い。なんでも昔の駅舎を改装したらしくオルセー美術館なみの広さ。
②ディスプレイがうまい。きれい。つい足を止めてみたくなります。
③圧倒的な品ぞろえ。なんでもある。比べられる。種類が豊富。
④カフェやレストランが同じスペースに同居。これは面白い。しかもどこも個性的でおいしそう。

まとめていうと、大きなスーパーの中に、専門店が入りこんで融合し

ている感じ。
チーズ屋さん、肉屋さん、魚屋さん、パスタ屋さん、ワイン屋さん、ビール工場まで!
ビストロ、いろいろなカフェ、ケーキ屋さん、ピザ屋さん、パスタ屋さん、ローストチキン屋さん、肉専門レストラン、
魚専門レストラン、生ハムの店、もう大変!このすべてがオープンスペースで仕切りなし。
ここに住めます。1週間はゆうに楽しめる気がします。
ランチをしました。マグロのタルタルと、生肉。そしてトマトサラダ。素材が新鮮で美味しい。昨夜のレストランよりもクオリティが高い気がしました。またイタリアはビールが豊富。ラベルもとてもかわいく、味も個性的。なぜか日本ではほとんど見かけません。なんでかな?

おまけ1 ローマの夜
July 2nd, 2014

P1010013その夜は打ち上げとなり、ローマにあるセッテンブレというワインレストランへ。以前も行きましたが、今回は旅で大量にいただいたワインを持ち込みして、再度確かめつついただきました。
8時ごろ店先にタクシーで乗り付けると、すでにあふれんばかりの人。
店はすっかりリニューアルされていて、カジュアルでオープンな感じになっていました。惣菜やスイーツが上手にディスプレイされていて、みるからに美味しそう。食欲をそそります。テイクアウトもできるのかもしれません。

書斎をイメージしたリビングのような部屋はぐるりとソファがあり、そこへテーブルが配置されています。
一人一人にイラストが異なるテーブルペーパーをおき、突き出しはポテトチップス。しかもこれが見事にしけっている。これを東京で出したら変えてくれと言われるだろうなあ。もちろんローマでは誰もいいません。

頂いたのは生カキ。悪くないけれど極上でもない。普通でした。
生ハムや、パスタ、チーズなどもいただきました。雰囲気は抜群。座る場所で違ったムードを楽しめる店です。料理はイマイチ。ワインは自然派もありますが、少ない。自然派の大御所といわれているワインを約150ユーロで注文してみましたが、今回の旅で出会ったワインのような感動はありませんでした。ただサービスの女の子が、愛らしく元気いっぱいで、ワインの資格を取るために勉強しているとのことで、山田さんはじめ、みなさんご満悦。
にやにやです。

ブルチャータ
July 2nd, 2014

P1000950マリオーザでの濃い時間が過ぎ、車はヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノへ。ワインを勉強した人ならすぐわかりますが、ここであえて復習。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノはDOCGワインの中で最初に認定された3つのうちのひとつ。残りはバローロとブルネロ・ディ・モンタルチーノ。モンテプルチアーノとモンタルチーノは似ていて言い間違えしやすいので要注意!教科書で習うとプルニーリョ・ジェンティーレという品種が70%以上使用されていることとなっていますが、それ、平たくいうとサンジョベーゼです。まあブルネロもサンジョベーゼの1種なので、それぞれの土地に根付いてその土地の特徴を表したサンジョベーゼがいろいろあるのだと理解してください。

マリオーザからは小一時間の距離。ここでもクイックにTAKEの解説をききます。エルマンノさんは元々、日本でいう道路公団にお勤めで、奥様の実家はホテル業を経営。今夜の宿です。
そして奥様のお父さんが作ったブドウ畑を引き継ぎ、ワイン造りを始めたのが数年前。ファーストヴィンテージは2012。「じゃあ、もう公団の仕事はやめたのね?」という疑問ですが、イタリアの勤務体制は自由がきくらしく、今も兼業。しかもアグリツリズモまで経営しているらしい。息子も数年前に会社勤めをやめてファミリービジネスに参加、いろいろ切り盛りしている。ふむふむ。

ところで途中、ウンブリアの有名な町オルヴィエートを望む高台を通りました。素敵な城壁の町で、せめて写真だけもとちょっと下車。ポーズの後、そそくさと車に乗り込みさらに進みます。

待ち合わせの高速出口についた頃はもう日が暮れそう。8時過ぎです。当主のエルマンノさんと、息子さんのアンドレアが出迎えてくれました。この人たち、とびきりの笑顔の持ち主。まるで20年来の旧友に再会したかのような人懐っこい笑顔と熱い握手。いっぺんで大ファンに!
そのままアグリツリズモへ。
車をおりようとすると「犬は大丈夫ですか?」とアンドレア。大好き♡、問題ないといい終わらないうちに黒い大きな物体がどーんとやってきました。
“ブルコ”登場です。
若いボクサーのオスで、もう元気、元気、エネルギーの塊。ブルコの案内で、脇にある小さな畑へ。ここは0.5ha。この古民家を買ったときに一緒についていたらしい。2010年に植樹したのはサンジョベーゼとコロリーノ。
一枝に5~6房つくように最初から剪定してしまい、あとは何もしません。と笑顔で話すエルマンノ。キャンティは凝灰岩と砂土壌で、ここは粘土土壌なので、すこし地力が強いのかな。

畑で恒例の写真撮影をした後は、自慢のアグリツリズモの見学。なんでも部屋のデザインから、簡単な家具作りまですべて自らやってしまうエルマンノ。まず目につくのはエトルリア人の墓!家の中に墓!?
なかなかシュールです。
そしてお部屋はすべて違う内装とコンセプト。素朴でオシャレ。センスよいなこのおじさん。
さらにブルチャータショップです!と紹介された棚には様々な製品が。ワインはもちろん、グラッパ、ヒヨコ豆、レンズ 豆、古代小麦のポン菓子や、噂に聞く極上オリーブオイル、そして何ともおいしそうなリモンチェッロまで。
買いたいよ~。買いたいよ~。とバーゲンさながら商品を手に取るも、TAKEに慌てるなと制止されます。
ダイニングも買い取った時のままを、なるべく残して味のある空間。部屋の入り口には何やら穴あき丸マットが、と思ったらオリーブを圧搾するときのフィルターを模したものだそうで…へえ初めてみた。
外にある巨大な石で造られたBBQグリルはもちろん!?エルマンノの手作り。畑の脇にゴロゴロしているらしい。しかしこんな石どうやって運んだのだろう?しかも何時間かけて削ったのかな?この人1日何時間あるのかな?
だって、公団で働き、ブドウ作り、オリーブづくり、豆とかもたくさん作って、家具も作って、ホテルもやって。
しかもブルコの散歩も?スーパーマンだな。
さあ、いよいよホテルにチェックインして待望の夕食&テイスティングです。
【食べる&テイスティング】
ホテルは想像以上の大きさで、またびっくり。こんなホテルがありながら、アグリツリズモも開いたなんて。
奥様登場です。中尾ミエをかわいらしくした感じで、彼女の笑顔もこれまたすごい。オープンマインドなのが、一目でわかる。

すでに9時半。遅い夕食です。
まずテーブルにつくと用意されていたのは、
①新鮮な野菜の盛合せ+2種類のオリーブオイルの食べ比べプレート
画像の右にあるのが、生のアーティチョーク。人生初体験です。この年になっても初体験ができるなんて海外ならでは。フヌイユも苦味があっておいしい。オリーブオイルは色が濃い。緑がすごい。これも飲めそうです。緑ラベルが単一品種でブルーがミックス品種。

②次に焼き野菜やレンズ豆、ひよこ豆を煮たものや、チーズ、そしてブラッドオレンジなどが大皿で用意されていて、それらを少しづつブッフェスタイルでいただく。
あまりの美味しさに写真撮るのを忘れます。

③さらにお約束のパスタ!あ~・・・・・言葉になりません。
ピチという名前のパスタらしい。トスカーナのシエナ発祥のパスタでまさに地元。
紀元前八世紀のエトルリア時代から食べられていたらしい。
ちょっとうどんみたいですけど。

④そして出た~この旅2回目のフィオレンティーナ。がお腹がいっぱいで2切れがやっと。くやしい。今度は野菜とこれだけでいい!なぜか3枚もテーブルに並ぶ。肉が苦手な私ですが、美味しいと心から思えるステーキでした。

⑤お腹いっぱいなのに、デザートは別腹でリコッタにハチミツを練りこんだような口どけスイーツ。
お伴は自慢のグラッパで。
ワインは以下のとおり。今秋に日本上陸予定?日本でどんな表情をみせるのか。楽しみです。

Barcaiolo – Chianti Colli Senesi
顔のラベルが印象的。今回の夕食では一番最初に出されました。
生野菜ともいけるグイグイのめるワイン。
旅疲れだった私には一番おいしく感じられました。

Ermete – Rosso di Montepulciano
キリンビールのラベルそっくり。
思わず画像みせたけれど、エルマンノはそうかなあ?
という表情。
ワインは濃いけれどこなれ感がすごくあって、まろやか。

サンジョベーゼ92%、残りはプティベルド、カベルネ、コロリーノなど。
Cesiro – Vino Nobile di Montepulciano

さすがの重厚感。
でも口にすっと入る角のとれた感じが共通。
これが初ビンテージだなんて、ちょっと驚き。
最初からこんなにこなれ感って出せるのだろうか?

Tizzo-Rosso Toscano
もう在庫なないんだけど…といいつつ開けてくれた
ティッツオ。これも顔。ここのラベルはどれもインパクト大。ちなみにキャップシールにはブルコがいます♡
夕飯も大方済んで、ブルコも再登場し、お土産タイム!ご機嫌に手ぬぐいをまく親子。
実はお嬢さんもいて、今イギリスに留学中とか。彼女が帰れば英語も完璧だから、
もっと話がしやすくなるわねって。

なんだか、心底うらやましくなってしまったモンテプルチアーノの夜でした。家族っていいな。

【ワイナリー&畑にて】
本当は昨日のうちに終了するはずだったワイナリーツアー。夜がきてタイムアップし、翌日に持ち越されました。
美味しい朝食を堪能し、ホテルの外でエルマンノを待ちます。
簡単なヨガで精神統一をしていると、中尾ミエことカティアが来てやりたそう。片言のイタリア語と英語でなんとかコミュニケーションをとりつつ教えます。
ちょっと太り気味ですが、バランス力はなかなか。案の定、膝と背中が痛いそうで、おすすめのストレッチなどを伝授します。話すうちに意気投合。次回は彼女むけのプログラムを用意して畑や温泉などのパワースポットでヨガろうと約束。ここら辺は温泉地としても有名だとTakeが言っていましたっけ。魅力的だ。次回は我が家へ泊まりなさい。その代り私が東京へ行ったら泊めてね。あ~本当にそんな日がくればいいな。またまた家出の行き先が増えました(^^)
聞けばTakeも初対面の日に、なぜか泊まることになり、この家族の明るさに驚いたそう。イタリアでもこの土地の人はとびきり明るくて、オープンマインドなのだそう。きっとワイン造りにも影響しているはず。

エルマンノが来て、ホテルの裏手へ。あれ?ここは私の部屋から見えた倉庫では?ここがワイナリーだったのか。
奥様のお父様が昔つかっていたところを再利用。本当に小さい。
小さいながらもセメントタンクがどんとあります。入口の大きさに合わせて発注したらしい。
温度管理はなし。マリアボルトロッティ同様最初にスターターを作って発酵を促進しています。ゆっくり、ゆっくりと発酵させ、その時点でSO2は加えません。皮からすべてが取り出されるのを待つそうで、タンニンがしっかり出てくることで抗酸化作用を持ちます。これはパオロさんも言っていたことですね。
マロが終わったあとにオリ引きし、タンクを変えるときはじめて少量のSO2を添加。

「これがSO2だよ」と指差したところにあるのは、食べかけのお菓子か!と言いたくなるような無造作な感じで輪ゴムで縛られた使いかけの袋。
本当にちょこっとしか使ってないのがわかります。もっているところは小麦粉の大袋みたいなものを何袋も大量においてありますからね。全量で20㎎以下だそうです。

タンクから試飲します。
☆ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ2012
すでにとてもきれいに澄んで、このままでも行けそう。

☆ロッソ・ディ・モンテプルチアーノ 2013
花のような香りが押し寄せ、細かいタンニンはすでにとけています。うん、いい!
早く完成品が飲みたい。

☆ロッソ・ディ・トスカーノ(テイッツオ)2013
ほかに比べて強い。350本から1000本と言っていたので、売ることよりも飲むことを意識して造っているのかなと思います。
それにしても、ファーストリリースからワインの味がとても落ち着いていて、こなれている。エルマンノに尋ねると…
「パッションだよ、理想があるんだ。情熱さえあれば何でもできるということさ」
「自分が飲みたいと思うワインを造っているだけ」

とのお答えでした。(^^)

ちなみに、タンク試飲のワインを吐き出す容器がなく、
外や床に吐き出します。これは普通のこと。
私はシンクを見つけそこへ。
一通り試飲が終了すると、まず試飲につかった容器を
シンクで丁寧に洗い、デッキブラシを持ち出して、床を掃除し始めます。この清潔さがSO2少量でもいける大事な要素。わかってはいるけれど、感心してしまう光景でした。

さあ、畑へ移動します。

【畑にて】
メインの畑はしゃべっている舌をかみそうな凸凹道を通ります。当然黙ります。
彼らの住む家もすぐそばにあるらしく、カティアがしきりに来てね♡と言ってくれ、本気で来ようと思う私。

畑の入り口には、本当に大きな岩がごろごろと。これを運んでBBQ台をつくったらしい。
ヴィーノ・ノービレが見渡せる標高600メートルの丘の上です。
サンジョベーゼを9月末、モンテプルチアーノは10月初旬に収穫、その1週間後はプティ・ベルド。
この時期は毎年あまり変わらないと。標高が高い分、周辺の畑よりゆっくり熟す。
畑のトータルの広さは2.5haでこじんまり。でも、兼業ですからね。

ここも今年は冬があまり寒くなく、よって虫の活動が活発でモニタリングしているそうで、粘着性の紙に小さな虫がくっついていました。
さらに、ぶっつり切れた枝もあり、それは鹿が食べちゃうらしい。
鹿もよく知っていて、隣の農薬バンバンの畑は素通りし、ここへわざわざやってきて食べていく。賢い。

オリーブの樹もブドウ畑を囲むようにたくさん植えられています。あの強烈な緑は、すこし青いうちに収穫して発色をよくさせているそうで、朝収穫して夕方には圧搾するらしい。
今は酸素と一切触れることなく搾汁できる機械があり、10月中旬に毎年ヌーボーができるみたい。
出来立て、しぼりたてを一度味わってみたいものです。
当然のことながら、ここも植生が豊かで、森が半分以上を占め、自然のパワーに満ちた場所。ここで働けることが喜びだとエルマンノが満面の笑みで言っていました。
名残惜しい人たちともお別れの時間。旅の最後にこんな場所がまっていたなんて、 Takeもなかなかやりますな。朝一でローマへ向かうはずが、昼近くの出発に。

ここからローマは2時間くらいの距離です。

マリオーザ
July 2nd, 2014

P1000845さあ、旅の最終章は未訪問の2件。まずはマリオーザ。チェレータと同じマレンマ地区なのですが、山をぐるっと越えていくのでなかなかのドライブ。走りつつTAKEの解説を聞きます。
オーナー一家はもともとミラノが本拠地の“実業家=お金持ち”。この地に昔からあるスパリゾート&ホテルの経営に参加したのが25年前。生まれた家の定めか、女の子なのに男の子のように育てられたアントネッラ。すべて1番でないと許されなかったらしい…う~ん、普通の家に生まれてよかったな。と独り言つ。
2003年までは彼女がそのリゾートの社長を務め、この地のことは知り尽くしていたそう。
さあ、話すうちに待ち合わせ場所であるホテルが近づいてきました。

「ここです」とTAKEがアプローチしたのは、なんともゴージャスな門がしっかり閉まっている入口。
インターホンで話すと重々しく門があき、その向こうに広がる広大な敷地!えっ!ここ全部がリゾート?
チェレータも、バリのリッツカールトンも広大だなあと思っていたけれど、桁違い。
町か!とつっこみたくなるような、見渡せないほどの広さ。
ゴルフ場もあり、ジョギングコースあり、ミシュラン星付きレストランあり、そしてホテル入口に。
ここで待ち合わせということで、さっそく中へ…広がる硫黄の香り。温泉なんだな。本当に。
香りは草津と全く同じですが、このゴージャス感。う~ん。また唸る。

トイレを借りようと奥へ進むと、見えてきたスパ。まるでプールですが、これが温泉。
プールサイドで支配人にエスプレッソをご馳走になります。

それにしてもこのホテルの規模たるや…。

さあ、この支配人の車に分乗して、アントネッラの待つ畑へ。わりと走ります。
脇道の農道にはいり、一番奥まで突き進んで小さな建物のそばで車を降ります。
もう、そこは彼らの畑の中。全130haのプロパティで、そのうち40%が森。
ソーラーシステムも見えます。将来的には全ての電源・エネルギー源をソーラーをはじめとする
自然エネルギーに変えていくのだそうです。
この小さな建物は900年前のもので、当時畑で働いていた家族の子供たちのために建てられた小学校だったらしい。まだ使えそうだったので、修理をし、1階がワイナリー。2階はテイスティングができるものすごーくおしゃれなリビングと会議室。そしてゴージャスなキッチン。
古民家+最新鋭のイタリアデザインがミックスして、これ以上ないほどセンスよし。
【畑にて】さあ、畑を歩きます。
登場したアントネッラはききしにまさる男っぷり。意志の強い目元、きりっと結ばれた口。もう一人の重要人物=ロレンツォも一緒です。彼はアントネッラのワイン造りの師匠にして、ワインプロジェクトの総監督。サスティーナビリテイィの第一者で、自らも少量のワインを造っています。もう、たたずまいから、顔つきからすべて先生!という感じで、「わからないことはなんでも聞きなさい。聞くことがまず大事だからね」と。彼は学もあるけれど、自ら畑に入る実践者でもあるのだとTakeが教えてくれました。

2005年にアントネッラが古い畑を購入し、ワイン造りが始まりました。
彼女は最初から「ビオディナミコ以上のものをやる」と決めていたそうで、今後もビオにこだわらず、ビオ以上に消費者の健康を守り、この自然を守れる農法が開発されたら躊躇なくそれに移行すると断言。
「このエリアはとても特別で、ここで出来るものはここでしかできない。そこに価値を見出している」。
アイパッドを片手に、こちらの質問に熱く答え、話が終わるとノートに書き留める私たちを残してズンズンと歩いていってしまいます。

歩いているのは、これからぶどうを植えていく新しい土地。ワイナリーのすぐ裏手です。
ロレンツォが彼らのコンセプトを話してくれました。
これから何かを植えるときは景観も大事にしたいんだ。トスカーナ本来の景観を守っていきたいからね。昔ながらの美しさを。だからブドウも上から下へ植えずに横に、土地の起伏に沿って植えていきたい。必要に応じてだんだん畑にすることもあるかもしれないよ。機械を一切使わないので、人間の作業効率を考えても横にうえていくのは理にかなっている。人間も動物だからね、消費エネルギーの観点からいっても上から下は厳しいんだ」
…なるほど。なるほど。

ここで私が想像したのはスキー。急な斜面を直滑降でおりるのはエネルギーがいりますが、斜滑降で降りるエネルギーは抑えられます。これまで何回も畑でさまざまな話を聞いてきましが、横植え発想は初めて。ワイン造りは進化しつづけます。

すでに畑には小さな株が植わっていて、それは支柱を中心に五角形=ペンタゴーノになっています。ん~どこかで聞いたような。そう、カスッテリーナのアルベレッロの畑と同じような造りです。
ここは主に粘土質、海洋性体積土壌でとても地力が高い。だから黒ブドウを混植で植えるらしい。

見えますか?これがブドウの苗。

【テイスティング&食べる】
いったん先ほどの建物に戻りテイスティングです。といってもワインは白と赤の2種類。
まずは2013の白。
品種はプロカニコという初耳の土着品種。ロレンツォいはくトレッビアーノトスカーノとも言われているらしい。
2013年春は雨が多く、6月中旬から夏になり、夏は通常通り。
風がいつも吹くエリアで、夏の終わりに暑くなったのでぶどうの成熟には最適だったと。
最低でも13度のアルコール度数がなければ土地の個性がでない。

香りはやたらと複雑でいろいろな花やはちみつ、果物などを連想させる。日本で最初にマリオーザの白を飲んだときの印象とはまた違う。現地だからか、余計に生き生きしているのかな。
でもしっかりした骨格や旨みの量はものすごいパワーで押し寄せる。
ロレンツォが解説してくれる。
「これは簡単にわかるようなワインではない。太いワイン。粗いワイン。発酵は3週間でも終わらないからね。色を見て飲むから白と思えるけれど、黒いグラスで飲んだら赤ワインと思う人もいるだろうね」

ここは暑い土地で雨の量もすくない。でもプロカニコはとても強い品種なのでこの土地に根付いていたんだろうと。同じ土地にカベルネを植えてもダメだと思うよ。

と、ここでアントネッラがピシャリ。
ブドウに水を与えることは完璧なエネルギーの無駄遣い。水が必要なブドウを植えること自体が間違っているわ。だって今の時代、何人もエネルギーの無駄遣い、水の無駄遣いは許されないからね

同じ農園からつくられるマリオーザブランドのハチミツとオリーブオイルを試食。
オリーブオイルはごくごくと飲みたくなるほど爽やかで、新鮮なのがわかる。はちみつは濃いのに喉がやけない。さらっと感がなぜかある。もちろんどちらもビオ。隊長が作るものは本当に安心して食べられるな。
どちらも大びんでお土産までいただき恐縮。そろそろ帰りのスーツケース重量が心配になってきた。

続いてワイナリーに移動して赤ワイン2013はタンクから。
こちらもチリエージョという聞きなれない土着品種が70%。サンジョベーゼ30%。
これも以前日本で飲んだものとは全く違うワインになっている。ロレンツォが携わりワインが大きく方向転換したみたい。しかもいい方向へ。
こちらも御多分にもれずセメントタンクを使用。発酵は4週間!長い。15日間ステンレスタンクに入れて落ち着かせ、大樽熟成11か月たったところ。
瓶詰は?と聞いたら「秋ごろかなあ。待つんだよ、その時がくるまで。ひたすらね」

ロレンツォが解説します。
いいブドウさえあればワイン造りは簡単。例えばブドウが健康でよく熟していれば長いマセレーションも問題ない。でも不健全ならば一週間のマセレーションでもエレガントさは失われる。収穫を間違えるとそのワイン造りの98%を間違えたことになるんだ

それにしてもこの2013ヴィンテージは暑い土地から生まれたワインとは全く思えない涼しさを持ち、透明な果実と旨みに満ちていて本当においしい。これが完成品となって日本にくるのが心から楽しみ。

【再び畑へ】
ワイナリー離れた場所にある畑に向かいます。最初に購入した畑です。
2番目に地力が弱い土地だとロレンツォが言っています。
ここはもともとブドウが植わっていたので、ペンタゴーノではありません。
ブドウの樹の根本を中心に藁のようなものが敷き詰めてあります。
“マルチング”という方法で、ブドウからできた藁を使います。マルチングの目的は
①余分な下草が生えるのを防ぐ
②微生物が増え、有機物が増える
③水分不足になるのを防ぐ
④時間がたつと、ミミズが増え土壌が豊かになる

実際に藁を掘って下土を触ってみると暖かく湿っています。
全ては自然な状態で地力及び植生をキープするため。
こんなことも言っていました。
「耕せば耕すほど微生物が減って地力が落ちてしまう」
「地力が強すぎるところにブドウを植えるべきではない。強すぎるとブドウも腐ってしまう。土地の条件を理解し、何を植えればいいのか知ることも大事だよ」

今まで他のワイナリーで聞いてきたことと全く逆のことのようにも思え、または回りまわって同じことにもなるのかな。

さらに上にあるロレンツォ曰はく“もっとも地力が弱い土地”へ向かいます。急こう配で見晴らしのよいところ。
なにやら藁が大量にあるので、これから畑として仕上げていくのかなと思ったら、よく見るとすでに苗が植わっていて、大量の藁は必然としてそこのあるのでした。ペンタゴーノ仕立てですでに支柱もたっています。
ペンタゴーノはバランスが高まる仕立て方で、もっとも自然に近い形でブドウを育てることができると。

ここへきて、ちょっとゾクゾクと鳥肌がたってきました。
もしや、この人たちは今まで誰もやってこなかったようなすごいことを成し遂げようとしているのではないかな?

それはアントネッラの鉄の意志と圧倒的な財力をバックに確実に数年後、実を結ぶのではないかな?
そこからさらなる急こう配を登り、山の頂上を目指します。途中、ここにもブドウの苗を発見。登るのもやっとの斜面をブドウ畑へと作り変えているのです。
同じイタリアのピエモンテの蔵元、カッシーナ・カロッサの畑を彷彿とさせます。
しかもここは360度のパノラマつき。地力うんぬんよりもパワースポットであることは間違いないな。
アントネッラがロレンツォをパートナーとして誘ったときに、ここへ連れてきて口説いたそうです。夢を語るには泣けるほど説得力のある場所。
もちろん、ここも横植えのペンタゴーノ。数年後に必ず訪れたい。ここが畑として出来上がった景色をもう一度みたい なと思いました。
さあ、ツアーも終了して次の目的地へ向かおうと車に乗り込むとロレンツォが窓越しに話かけてきました。
「すばらしい君たちへ。人生は一度。そして短い。私は確実に君たちよりも年をとっている。やりたいことを実現させてほしい」

ラ・チェレータ
July 2nd, 2014

P1000804サセッタに来るのも4度目。ワインディングロードを登りつめた別宇宙にあるラ・チェレータ。
そして、なぜかいつも少し緊張する。
荷物を部屋に置いて畑&ワイナリーツアーへ出発!と思ったけれど、
ランチ抜きでお腹ペコペコということでちょっとパンとチーズなどをいただく。
画像手前のチーズはなんだったかな?
ものすごく臭い。水では無理。ワインと合わせたかったけれど、まだ仕事だし
お楽しみは夕食タイムにとっておきます。
【畑にて】ここの畑はいつも送風状態。さやさやといい風がいつも流れている。畑の植生はティレニア海沿岸のそれと同じだそうで、ここも海の影響を受けている。今年は冬が全く寒くなかった。例年0度以下になる日があるのだけれど、それもなく今のところ成長は非常に順調だと。ただ、0度以下にならないと病原菌が死なないので、今後害虫や病気が発生する可能性がある。

畑で聞いたお話①
今年初めて微生物散布をしたそうで、それについて。
先ほど書いた病原菌対策として、病原菌を死滅させる微生物を撒いたそうです。ナチュラルなものでブドウの樹に発生するカビ菌を食べてくれるらしい。今までは2~3回硫酸銅を撒いていたけれど、硫酸銅は自然のものではないうえに費用がとてもかかる。この微生物がとてもよく働いているらしく今年は1回で済んだ。
サンジョベーゼやベルメンティーノは灰色カビ病になりやすい品種なのだが今年はその兆候さえない。「やってよかったよ」とマッティーア。

畑で聞いたお話②
当然チェレータの畑にもわさわさと下草が生えています。
フランチェスコーニににょきっと育っていた樫の木がここにも小さな命を育てていました。抜かないの?ブドウの生育に邪魔じゃないの?と聞いたら「もったいなくて抜けない」と言っていました。
「樫の木が生えるっていうのはブドウ栽培に向いている証拠だよ」って。ふ~~ん。

歩きながらマッティーアがクローバーを抜きはじめました。ん?
クローバーはマメ科で空気中の窒素を根に蓄えると書きましたね。
なんと1haあたり40kg~50kgも吸収するそう。マッティーア曰はく「動物用の薬も豆からつくられるものが多い。豆は植物にも、動物にも、人間にもなくてはならないものなんだよ」

ブドウだけではなく、チンタセネーゼという豚や地鶏も飼育しているチェレータ。一般的な養豚は5~6か月で、養鶏は30日で出荷されるらしく「信じられない。どうしたらその期間で大きくなるのか。薬や不自然なエサを与えているとしか思えないよ」
チェレータでは最低、豚は2年。鳥は60日飼育するそうです。美味しいものには理由がある。

畑の端っこに植わっている黒ブドウ3種は
①Foglia Tonda
②Balsaglina
③Cololina
通常は補助品種として使われる地ぶどうで、土地の味だからということでそれぞれワインにしてミニボトル3点セットで販売している。飲んだことないな。飲んでみたいな。パンチありそうだな。

堆肥がこんもりと積まれてその上に草が勢いよく茂っていた小山。
堆肥も2年くらいたったものがいい状態になるそうで、若いと窒素が強すぎてだめなんだそう。2年たつとミネラルのバランスがよくなるのだと。
ここでも出ました“植物多様性”
「森がお手本だよ」完璧なのは森だそうで、森に土に畑の土を近づける努力をしている。

【ワイナリー&樽から試飲】
①マティス2013
2013はまだ発酵途中。今年のぶどうはなまけ者だよとマッティーア。
オリ引きはするがフィルターにはかけない。パイナップルや白桃のシロップ様の香りがふわーっと立ち上る。まだ泡を感じピチピチする。一部を樽に入れているが、中をトーストしない樽なので(熱湯をかけるだけ)香りがつかない。樽は酸化を促進させるし、樽で発酵させるとワインが澄む。一方、ステンレスタンクで発酵させたものは柑橘系の香りがたち、シャープな触感になる。
ステンレスと樽を混ぜたりしつつ徐々に均一にしていく。

②シラー2012
爽やかでタンニンがとても細かい。これから樽熟2年を予定している。
「ただ待つんだ。ワインがその状態になるまで」
サンジョベーゼも2000年に仕込み2005年まで待ったマッティーア。すでにウルトラ旨いのにこれが2年樽熟させたら…。1か月毎に味をみてチェックしているそうです。

③サンジョベーゼ
今回の蔵試飲で一番ヒットだったのがこれ。キャンディやイチゴの香りががしがしと立ち上る。透明感があってきれいなのに濃い。大好きな味だな。
和食にも、イタリアンにも、エスニックにも合いそう。

④カベルネソーヴィニヨン
ビロードのような舌触りとやさしさ。包み込むようなタンニンが素晴らしい。とても粘性があり、凝縮感たっぷり。
チェレータのワインは品がある。清廉さがある。“エチェレンテ=とても素敵”
【テルメ体験】
チェレータのテルメはとてもゴージャスで本格的。
この日も大勢の人でにぎわっていました。もちろん水着に水泳帽ですが(^^)
裸ではいれたらもっといいのにな。
ここに入るのは2度目。やや寒くて外はつらい。でもプールで15分くらい泳いでみました。

ちなみにここはアグリツリズモもあって今回は人数がすくなかったのでラッキーにもここに宿泊できました。
こんな感じです。かなり素敵。

【食べる】さあ、お待ちかねの夕食。ランチを食べないことが多いので夕食を美味しくいただけます。
名前を忘れましたが、はじめましてのサービスマンがいて彼がステキ。こころのこもったサービスをするプロです。
メニューを渡されて選ぶ。ここでは、いつもノーチョイスで出てきたものを美味しくいただいていたので、このスタイルは初。きっと彼がきてサービスの幅が増えたのだろうな。そしていつ来てもフルでお客様が入っている。
さあ、何をチョイスしたかというと…。メインはボリュームありそうだったので前菜を2品選んでメインとしました。

①豆のサラダ
畑でマッティーアが豆は全ての生き物に欠かせないといっていたのを思い出し、豆サラダにしてみました。
んん~滋味あふれる。味付けがなんとも優しい。ソラマメみたいのが生なんだけれど噛めば噛むほど味が湧いてきました。
Insalataa di ceredi tiepida

②マレンマ牛のカルパッチョを少しだけ。
ソースが変わっていて甘かったり、酸っぱかったり、噛む場所で味わいがコロコロと変わり楽しい。肉は赤身で旨みたっぷり。
が、されど肉。ここですでにお腹が…

Battuto di Vitello Maremmano con zabaione salato

隣の人が頼んでいたパスタでニョッキ。
私はパスタはパス!(^^)/
chi di patate al pesto di salvestrella

隣の人のメイン。
マレンマ牛ロースト
ここのスペシャリテ。

Spalla di Vitello Maremmano arrosto

③私のメインはアスパラガスと地鶏卵の目玉焼き
なんか朝ごはんみたいですけれど。
アスパラは旬。そして卵が美味しい。実は卵苦手ですが、
くさみなく美味しくいただきました。

Uova di Gallina Livornese all’occhio di due con asparagi selvatici

④デザートはカスタードパイ苺のせみたいな。
オーソドックスで安心する一皿。
スイーツは別腹でこれはペロッと。
先ほど蔵で発見したヴィンサントとともに堪能。
なんでも日本用は6本しかないそうです。頑張れBMO!
Crostatina alle fragole

★食事ででてきたワインは
①ソラーレ 爽やかでみずみずしく旨みたっぷり。ごくごく飲む・・・
②リオ・デ・メッシ 重厚感たっぷり。旨し!
③ヴィンサント 初お目見え。日本むけは6本だけだって(>_<)
④グラッパ あまりのおいしさに2杯も飲む 翌日2本購入。

今回マティスは飲めず…。なかったみたいです。残念。

ダニエーレと2ショット。
いつも優しく包んでくれる。
今回はチェレータのこと物語にするという作家女子が隣にいて
ほとんどダニエーレと話せず残念。
でも、翌朝偶然にまたあえて2ショット再び。
ここへは本当に仕事抜きでただただぼんやりとしに来たい。
この場所にいるだけでセラピー。

カスッテリーナ
July 2nd, 2014

fabio4度目の訪問。だいぶ肌寒い。まずはワイナリーへ。
イヴァンのいつものセリフ 「ワイン造りはブドウ作り。畑の仕事が90%。だからここでやることはほとんどない」
仰せのとおりでございます<(_ _)>
今年はこんなセリフも。 「ワイナリーでの仕事をなるべく減らすために、畑でのぶどうの状態をそのまま、持ってくることが大事。なるべくそのままを壊さないように…」
今年変化が見られた点その①
セメントタンクが増えていて、積極的に使っていくらしい。樽使用はどんどん限定していくつもりとも。今、バリックを使っているのはメルロだけ。セメントタンクのいい点はステンレスタンクに入れることにより若干失われていた香りと色が維持されること。
その②
イヴァンが自信満々。10年たちビオディナミコのことがわかってきた彼ら。最近はワインもとてもよく売れてほとんど残っていないよと嬉しそう。いろいろ悩んだけれど、畑のスタッフを含めていいチームになってきた。これからがスタートだと思うと言っていました。

発酵時に温度管理をしていないので、発酵前とボトリング直前に少しだけSO2を添加している。
理想は解放樽で屋外で、空気と日光で発酵させたいのだけどね。とも。さらっと書きましたが、すごいことです。
でもイヴァンならいつかやりそうだな。まさに現代のワイン醸造論に逆行した考えだけれど、ブドウが健康ならできるに違いない。

【畑にて】今回は到着が夕方になり畑歩きはほんの少し。ここのブドウたちは、いつも元気でのびのびしている。そして見渡す限りの森とオリーブに囲まれて安心しきっている。植生は海沿いにあるものと全く一緒。海からは結構な距離があるのに不思議なことです。畑は砂浜のようにさらさらっとした砂地土壌。イヴァンによるとブドウの熟成が早いエリアで、ワインもすぐにまろやかになる。長期熟成には向いていないのかと。
畑ではプレパラート500やマメ科の植物をはやして土に混ぜ込むなどで栄養としていて、動物系の栄養は使わない。有機分が多すぎるとエレガントさを失う!とも言っていた。多ければ多いほどいいのかと思っていたので意外な発言。モンタルバーノのエレガントさはここからくるのかな。

畑で聞いた面白い話。
イタリアのビオディナミコワインを評価する雑誌があって、過去最高点に輝いていたこともあるカスッテリーナ。ここ数年は興味がなくなったらしい。「だって審査に出品するために、未完成なワインを送ることもあったんだ。そんなの不自然だろ? 審査してもらうためにワインをつくっているわけじゃないからね。タイミングがあえば送るけれど、もう重要視はしていないんだよ」
おお~自信たっぷりだな。でも共感できる。自信がついてイヴァンから力が抜けた感じがする。

「いつも正直でありたい」とも言っていました。
通常より2週間遅く摘んだサンジョベーゼをリゼルバにするという話の流れから、普通のワイン造りは熟すだけブドウを熟して、当然下がる酸は醸造で補てんする。そういうことをしたくないからね。と。
ホント、正直なワインだけ飲んでいたいものです。

【試飲】
宿泊するハウスの前に広がる芝生で試飲。
つまみに用意してくれた窯焼きパンと、ここのオリーブオイルが抜群。これから夕食とわかっていても手がのびる。
オリーブの樹は6種あって、すべて手摘み。その種類ごとに製品にしている。すべてキャラが異なるから。収穫したら4時間以内にプロパティ内にあるプレス場で圧搾。のどにはりつく濃厚さと、ピリッと辛い後味で塩やパルミジャーノをいれなくても十分に満足できるオイル。なぜ日本でこれが食べれないのかな?頑張れ片岡物産!

① SOLARE 2013(vermentino100%)
2013年は涼しかったのでアルコール度数低めとイヴァンの解説をききつつ。
とても爽やかで塩っぽい。余韻はかなり長い。今までのややヘビーなソラーレの印象を覆す味わい。簡単にいえば私の好みに。合わせたい和の食材がつぎつぎと頭をよぎる。
雨が降ることでエレガントさが増すことがわかったよと言っていた。通常は8月15日頃に収穫するが、2013年は9月初旬に収穫。

②IPOGEO2011 (Sangiovese (50%) Syra (20%) Merlot (20%) Cabernet f. (10%).)
友人の間でも評価が高く、人気の高いワイン。
リーズナブルなワインを造る取り組みで生まれたワイン。でもブドウ作りやワイン造りは手を抜いてないよ。安いけれど高品質だとイヴァン。お買い得ってことですね。
ドライフルーツのイメージ+香ばしさを感じる。IPOGEOは大地の香りという意味。
2012年、2013年のイポジェオを早く飲んでみたいな。

③ CHIANTI MONTALBANO 2012 (Sangiovese100%)
大好きなワインの登場。私はどうもカベルネSやメルロが苦手みたい。サンジョベーゼ大好き!
2012年は収穫の最中にも雨が降ったので、アルコール度数は低いが仕上がりはエレガントになったと。また7月は40℃近くまで気温が上がることがあったが9月には下がり落ち着いた。
まだまだワインが落ち着いていなくて、いろいろな要素がとがっている感じがするけれど、ここのワインに総じてあった、まったり感が薄らいで、ジューシー感が増している。ますます楽しみ!

④ CHIANTI MONTALBANO 2011(Sangiovese100%)
すべての要素が溶けてひとつになり、まろやか~。バランスがよく口にいれていることがすでに心地よい。
誰が飲んでも納得のキャンティ。すばらしい。

⑤CHIANTI RESERVA 2011 (Sangiovese100%)
2年以上2000リットルの大樽で熟成させたサンジョベーゼ。2週間の遅摘み。2006年が初リリースで2007年、そして3年空いて2011年。本当にいい年しか造らないのね。
震える旨さ。ここまでくると何か食事と合わせないともったいない気がしてくる。のちほど堪能したのだけれど…。
2006年、2007年のリゼルバを少しおいてから飲んだけれど、確かにここのワインは少し早目に飲み頃を迎えるのかもしれないな。

⑥Terra e Cielo Cru Alberello 2009( Sangiovese alberello vineyard100%)
古代式いや、もしかすると最先端仕立ての畑のサンジョベーゼだけで作られた特別なワイン。
香りのアタックは強め。ツンとくるスパイスや果実、ナッツの香り。探ると、とても複雑な香りがつぎつぎとあらわれる。味わいも同じく、いろいろな味が少しずつして楽しい。タンニンは細かく、が存在感はある。ワインの骨格である酸もきちんとしていて偉大なワインだど知らされる。

⑦DAINO BIANCO( Merlo100%)
久々飲んだダイノビアンコ。スキンコンタクト30日~40日、バリック中古樽で最低1年~3年も寝かせているのか。それにしてはリーズナブルかも。
美味しい。本格的。これを嫌いなワイン愛好家はいないはず。香りがとにかくふくよか~。これを飲むと和三盆で作られた上質な和菓子を思い出し、それを話していたら耳ざとくイヴァンがTakeに「例のあの日本の砂糖のことを話しているな!以前もダイノビアンコを飲んで同じことを言ってたぞ」と突っ込み。う~んもっとキーワードを増やさないと、ワンパターンな奴らだと思われてしまう。でも、本当にこのワインを飲むと和三盆を強烈に思い出すのよね~。

【食べる】さあ、ここでファビオの登場。一通り試飲も済ませ、ファビオの車に山田さんと乗り込む。英語の全く通じないファビオ相手に恐怖のイタリア語ぶっつけ本番体験15分をこなしつつ、昔水車小屋だったという雰囲気たっぷりのレストランへ。

広いレストランで100席以上ゆうにあるらしい。入口付近で生ビールの樽を発見!すかさず“ビーラ・ア・ラ・スピーナ”を注文。ワインもいいけど、イタリアはビールもおいしい。
ここの名物はスペルト小麦のピザとフィオレンティーナというステーキだということで、あとは野菜をお願いする。

ピザも野菜もすこぶるうまい。店が激混みなのもわかる。塩味で生ハムがのったピザがとても印象的だったな。東京にも同じようなピザはあるけれど、生地の味が違う。小麦が違うんだな、きっと・・・。生ハムも東京のは変に硬いか、しょっぱいか、脂っぽいか。ここのはどれでもなく、柔らかくて食べやすく塩加減も絶妙で、それだけが口の中を独占しない。もちろん脂っぽさなど微塵もない。

そしてこのステーキ。画像がすべてを物語るように、表面はクリスピーで香ばしく中身はジューシーな肉汁にあふれている。すごい。しかも大きさは約40センチ×15センチ、高さ5センチ。これを炭火で焼いているだとしたら、相当な腕前。ビステッカ・フィオレンティーナはTボーンステーキのことで肉はキアナ牛という種類。

でも一番驚いたのは、このクオリティの料理をこのファミレスのような雰囲気で出すこと。たくさんの家族が子供連れでワイワイ、ガヤガヤしながら楽しそう。子供のころから舌が肥えそう。

さて、料理の合間に話したファビオの言葉をどうぞ。
まずワイナリーで会ったときになんか感じた彼の変化。いつもより明るい陽のオーラ。
理由がわかりました。奥様とは別居して、別の女性と二人で暮らしているらしい。「アイムハッピー」だって。
よかった(^^)

ファビオと話すのはもちろん畑であったり、ブドウのことであったり、ワインのことであったりするのだけれど、
なぜかそれは精神論や人生論にオーバーラップされて私の心に突き刺さります。
不思議な人なんですよね。

カスッテリーナが本格始動して10年。今、当時と生えている草の種類が違ってきているといっていました。
畑でおこるすべてのことに意味がある。意味のないものはないといっていい。
おこる時期にも意味があるのだという。昔より深く根を下ろす植物が増えてきていて、それは土が固くなろうとしているのを自然が感じて、それを緩和させるためにその植物をはやさせているのだと思っていると。
今まで見てきた3つの蔵元にも共通してあった下草の話。ファビオの考えはさらにその先を行き、カスッテリーナという世界をとても高いところから見ているなという感じ。でも支配者はファビオではなく自然そのもの。ファビオは偉大な管理人。

“セルフィカ=エネルギーの調和”を農法に取り入れているそうで、話が難しくなりTAKEも訳しにくそう。これも今までの蔵元で言われきた植物多様性の一歩先を行く考えなのかな。それとも大きく過去に戻っているのかもしれません。

P1000657「ワイン造りにゴールはない。いかに自然と生きていくかを日々考えていえる。今日最高だと思ったことも、明日には違うものに見えてくる。運命は決まっているが、それを予想することはできる。すべてのことに意味があるから」
美味しい肉をほおばりながら、泣きそうになったよ。

★ちなみにカスッテリーナのファームハウスはとても古い重厚な造りで、
はっきり言って出る。怖い。鳥肌がたつ。ここに泊まって眠れたことないんですが、今回は部屋飲みしたので、それなりに怖かったけれど眠れました~。

フランチェスコーニ
July 2nd, 2014

P1000629エミリア・ロマーニャも奥が深いなと実感させられる今回の旅。昨夜の余韻を引きずりつつも、次の蔵元は車で40分くらい。ここも初訪問ということでTAKEから簡単な解説をうけつつファエンツアに向かいます。途中キウィ畑が広がる。初めて見た!でもこのキウィ栽培も長年にわたる農薬や人工肥料の影響で樹が弱り、死んでいる畑が増えて問題になっているらしい。ぶどうに限らずどんな農作物も同じ悩みを抱えています。

当主のパオロさんはもともと農業の専門家、指導者で、とくに農薬のスペシャリスト!だからこそ、農薬が畑や環境に及ぼす害や人間にふりかかる2次被害についても熟知していたと。そんな彼がおじいさんの畑で農薬を使用しないビオディナミコを始めようとしたのは自然な流れだったのかもしれません。

昨日のフォンド・サン・ジュゼッペの畑とは対照的に平坦な土地に降り立つと、そこにつなぎ姿の男性が。
パオロさんです。
笑顔がステキ♡ 頼れる兄貴という親分肌のオーラが出まくっています。

【畑にて】高低差がないので畑歩きも楽ちんです。フワッフワですけどね。
標高は85m。10万年前は川の底だったそうで地表部分は粘土土壌、その下は石灰土壌。水はけがいい土地だといっていました。昨日のステファノさんは水がでてとても困っていたので、同じエリアでも違いの大きさ、微気候を感じます。
畑歩きで楽しい話を聞きました。
もう当然の光景ですが、畑には下草がぼうぼうと生えています。その下草にも生える段階があるらしい。
まず麦科の植物が生え、その次にクローバーが生えます。クローバーはマメ科で空気中の窒素を地中に取り込む作用があります。小さな花をつける植物が生え、その花は3か月ほどで種を持ち、種がついた頃を見計らって耕すと種が地中にはいりそこでも栄養をもたらす。そして最終的に地力が強まったところへミントなどのハーブが生えだし、根っこ同士が近いのでぶどうの香りにも影響が与える。地力を高めると下草の種類が増える→植物多様性の完成です。
へえ~~~~。そうだったのか。

畑のはじにかなりの確率でベビー樫の木が。パオロ曰く鳥がドングリを埋めて、それを忘れてしまう。すると地力が強いから気がすくすくと育ってしまうのだそう。真偽のほどはわからないけれど、畑の真ん中にすでに立派な樫が。これも多様性の一部だそうで、大事にしているそうです。
【食べる&試飲】ご自宅の脇の木陰にテーブルとイスが用意してあり、そこでテイスティング。こんなに暑い日も木陰は涼しい風が通り抜ける。ヨーロッパの素敵なところです。

事前情報で“がっつり赤系蔵元”と聞かされていたような気がして、どうなることかと思っていたけれど開けてみたらアルバーナ(白ブドウ)勉強会。

Luna Nuova(Trebbiano100%)
新月のワインという意味。もうルナってだけでケース買いしたい。しかも新月というネーミングがマーケティング的にもいいと思う。女性が反応する率高し。
ワイン造りはオリ引きしたあとに残る細かいオリとともにボトリング直前まで置く。オリとともにあることでワインが酸化しないことは体験的に昔から知っていたそう。ボトリングの際に100ℓに対して2gのSO2を添加。トータルとして35 ml/ℓのSO2で、これは圧倒的な少なさ。レーズンやパイナップルなどのドライフルーツは200、ヨーロッパの辛口白ワインの平均が150ですから。そして2005年から選別酵母を使っていない。選別酵母を使うとすぐに発酵が始まりすぐにアルコールができるので酢になることは全くないけれど、天然酵母だと3~4日発酵が始まるのにかかるため、ほかの菌がはいりこみ酢になるリスクを背負ってしまう。

ワインは年号違いを3種試飲。2011年は夏の終わりが非常に暑く、2012年は全ての夏が暑かったのでぶどうが早く熟した。2013年は涼しい年だった。ここは平坦な場所なので高温になりすぎることが問題。夏は40度以上という暑さになることも珍しくないらしい。40年前はもっともっと涼しかったよと。今は昔のシチリアの気温だよと。冷静に考えると怖い話です。でも逆に冬場の冷害という心配はゼロ。すべて裏表です。

Vite in Fiore(Albana100%)
なんと足踏み圧搾!そんなの聞いたのはポルトガル以来だな。
アルバーナは果皮が厚い。だから旨みもあるけど苦みも強い。だからあんまりゴシゴシ絞っちゃうとえぐくなるので、考えられる限り一番繊細なプレス機=足でやるのだそうです。アルバーナは強い酸が特徴。酸はワインの大事な骨格、人間でいえば背骨だと私は常々思っています。通常は(例えばトレッビアーノなど)収穫が近づいてアルコール度数が上がると酸度が落ちるのが、アルバーナは落ちない。酸度キープ!しかも暑い夏でも凝縮しすぎることがない。よっぽど、この土地に合っているのだな。なんか古代の王様が愛用した品種的な気品を感じます。

Arcaica(Albana100%)
古代という意味。全く同じぶどうでヴィーテ・イン・フィオーリと正反対のワインを作ろうという試み。ヴィーテが苦味を出さないように足でプレスしたのに、こちらは皮をつぶしてスキンコンタクトもしっかり1か月。とても個性的でマニアックなワイン。ジビエなかもいいんじゃないかな。臭いチーズでじっくり赤ワインのように楽しむのもいいな。温度も17度くらい大きめのグラスで。
ヤギのレンネットを使ったという不思議なコクのあるチーズにものすごく合っていた。白ワインなのに赤のように力強く存在感たっぷりのアルバーナ三昧に感動!

Antiqua(Albana100%)
ついに登場。噂のアンフォラ熟成ワイン。
もはや白とか赤とかどうでもよくてこれはアルバーナワインなのだ。
とてつもなく長い余韻。深く品のある味わい。渋みもあるけれど
なにより心地よい酸が好き。吐き出すのがもったいないワインでした~

Limbecca (Sangiovese di Romagna100%)
赤ワインも少し試すか?と聞かれてもちろん!うなずく。
粒の大きめなサンジョベーゼを使用。粒が大きい=果汁たっぷりで
渋みは少な目という想像できています?
想像どおりシンプルでフレッシュなワイン。酸味がしっかりある。このあたりの郷土料理に合うんじゃないかなと勝手に想像。パオロさんが用意してくれたカルチョーフィ(アーティチョーク)の素揚げにばっちりだった。もちろん土地のチーズにも。

Le Iadi (Sangiovese di Romagna100%)
こちらは少し粒の小さなサンジョベーゼを使っているので、リンベッカよりもやや濃いめ。
でも肩ひじ張ってのむ偉大なワインという感じではなく、あくまで基本はカジュアル。葉っぱに星座が描かれているのがロマンティックだな。
D’incato (Centesimino)
昨日勉強したチェンテジミーノを使ったパッシート。ラベルはクリムト。
ステファノさんといい、パオロさんといいイタリア男はロマンティスト。
甘いワイン好きな私。ちょっと渋みが残るところがいい。
カルチョーフィの苦味ともよくあっていた。これもそうだけれど、ここのアルバーナ3種とかご飯屋さんよりもワインバーで受ける味だな。お客様が喜びそう。

旅のお気に入りショット。
カルチョーフィ→とげがある→私にもとげがある?
→カルチョーフィの女王という有難い称号をいただき晴れてツーショットとなりました。
日本で見るアーティチョークよりもずっと小ぶりで、この時期これを生で食べるのが一番のごちそうだとTAKEが言っていましたよ。
この真実は最終日あきらかに。

フォンド・サン・ジュゼッペ
July 2nd, 2014

P1000541マリアボルトロッティから向かう道すがら、初訪問であるフォンド・サン・ジュゼッペのおおまかなストーリーをTAKEから聞く。TAKEは今回運転手もこなしてくれて本人曰く一人4役。お疲れ様~。

当主のステファノさんはイタリア高級ワイナリー「GAJA」で約10年社長秘書を務めた異色の経歴。
GAJAなら間違いなく給料もよさそうで、普通ならそのまま居座るんでしょうが、この人はあっさり辞めて、イタリア中を歩き、自分の夢を実現する場所をBrisghella-ブリスゲッッラの自然に見つけ2008年に購入。
そのまま現在までガムシャラに突き進んできたらしい。

ワイン造りをする屈強な大男を勝手にイメージしていた私。待ち合わせ場所で初対面したステファノさんは、意外や意外、今でも秘書で通用するくらいインテリジェンス溢れるスマートな人。スキンヘッドで小柄でつるんとした感じ(あとからわかったことですが、私よりも2歳も若い!おお!)。

【畑にて】さっそく畑へGO!
登る、登る。これでもかというくらい車で登って山頂に降り立ち、丁寧な解説を受ける。トスカーナの州境から10キロのところ。「シンプルでスペシャルではないが本質的なものがすべてある」ところが気に入ったのだと。

「じゃあ、少し畑を降りてみましょう」と歩き出すステファノさんの後を、お、追えない!だってものすごく急な畑で転びそう。昨日会ったばかりのツアー同行者の腕をつかみ必死にあとを追います。
ここで作業するのは並大抵でないな。雨がふったら悲惨だな。
高度は350m~400m。北向き斜面はもう当たり前か。全方位を森に囲まれていて、作るブドウは90%白。
白が土地にあっていると。全17.5haのプロパティで畑は4,5haだけ。12haは森で、その他1haは何も植わってない土地。これから少しは増やすけれど限界まではやらないと。とにかく森が占める割合がものすごい。でもそれが大事で、それがすべて。

ここの畑で聞いた面白い話。
ブドウを剪定しますね。すると切り口は人間でいえば傷口。人間同様、ぶどうにも自分の傷口を治す力はあります。でも時間がかかる。治りきらないうちに冬になり雨がふるとそこから水分が樹に入り込み、凍って樹が割れることがある。割れたところから病気が入り樹が死んでしまうことがあるのだそう。それを防ぐために、剪定部分=傷口にプロポリス+銅をまぜたお薬を塗ってあるのです(左から2番目の画像参照)。まさに知恵と愛情。やるなあ。

30分ほど歩くと畑の突当りにテーブルとイスが用意してある。
まさか!そこで!!眺め抜群。すぐそこは崖。
なんというロマンティックなシチュエーションでしょう。
私がいうのもなんですが女なら100%落ちる。崖から落ちるのではないですよ、恋におちる。
ツアーメンバー唯一の独身N氏に熱心にここで口説くように薦めました。

いただいたワインはCollanimaコッラーニマ ~心をこめて~という意味だそうで、憎い。にくいなあこの人。
しかもグラスがリーデルのソムリエシリーズ。何千円というグラスです。それをこんな山の中で使うとは。
なんでもGAJAの社長から退社時に贈られたそうで、「コルクとグラスは最高級を」というのが社長の教え。今でも社長一族とはお付き合いがあるそうで、ステファノさんの人柄とセンスがうかがえる話。
品種はレッドアルバーナと古代から植えられていたというChentesimino-チェンテジミーノ。たった0,3haの完璧に森に囲まれた畑です。収穫時期に雨がふり、収穫自体をあきらめることもあったそう。
例えばトレビアーノでもここでは1haあたり4トンしかワインはできない。地力が弱いし、肥料もいれないので。
平地でふつうに肥料をあげて作るとこのあたりなら1haあたり20トンのワインができる。でも土地の本来もっている条件を変えるべきではないというのが彼の信念。

森との共生・調和がテーマ。
さきほどのお手当のお薬の話からもわかるように、すこ~しだけ森を整えてあげることでうまく共存している。

新しいものはいつも古いものから生まれる。古いものを大切に、そのまま生かそうとしているうちに新しい発見があるそうで、日本の「温故知新」にもつながる彼の世界観

さて、ステファノさんが紹介してくれた宿はこの旅一番のおしゃれなホテルで、そのメインダイニングで夕食をいただきながらその他のワインをテイスティングすることに。

【食べる&試飲】世界には知らないところがまだまだある。グリーンハウスのようなレストランにてAbbinamento-アッビナメント(料理とワインの組み合わせ)を楽しみます。

①小さな前菜 Cinque Cucchiai
ワイン

②前菜 Fiori di Zucca in Tempura e Salsa Agrodolce
ワイン Tera2013(Trebbiano)
*お馴染みのズッキーニの花に具をつめて天ぷらにしたもの。3個もでてきて先が心配になった。彼は2013の白ワインが素晴らしい出来あがりになったことをとても喜んでいて、最高の年と。気候のバランス、昼夜の気温差があり、雨も適度で香りも飛ばなかったと。
ラベンダーの香り。石鹸みたいな香りも。酸味と塩っぽさがあり好きなワイン。シンプルなのがいいな。3月19日にボトリングしたばかりと言っていたので、日本に届いてからまた飲みたい。

①     海老 Mazzancolla Scottadito al Sale Dolce di Cervia
ワイン Esor2013(Chardonnay80% & Rose muscat)

*エゾールはロゼの反対読み!わからなかった。シャルドネ主体のロゼワインというのがすでに個性的。4列しかないモスカートローザがこの色を与えているのか?
花の香り、そしてシトラス系のフルーツ。ミネラルも。生き生きした酸味が爽やかなワインで、この酸っぱさがいいな。焼いた海老との相性抜群。

⑤ 料理Ranfa di Polipo alla Brace,Spuma di Patate e Polvere di Cappero
ワイン Caramore2013(Chardonnay)
*マッシュポテトの上にタコが乗った料理。なぜかこれも3個づけ。ワイン名の意味はDear LOVE。2400本のみ。とても地力の弱いライムストーン・クレイの土壌なので常に収量は少な目。約2トン。でもその分、ぶどうは凝縮されて香り高い。温度管理をせずにコンクリートタンクにて発酵。樽は使わない。シャルドネについてステファノさんは「こんなに普及しているのに、こんなにいい品種なんだよ」と。畑に太陽があたるのは涼しい時間だけ。そんな過酷な状況がこの豊富なアロマを生み出すのね。本当にいい香りで癒される。こんなシャルドネならいつでも飲めるな。

②      パスタChitarra al kamut con Pesto, Cornetti e Patate
ワインCharla2013&2010(White Riesling)
*リースリングがうまい。やはり2013の仕上がりに大満足なステファノさん。2008年は売ってしまい、2009       年は貴腐がついてしまった。2010年は寒かったので早くつんでみたと。試行錯誤してきただけに完璧な気候だった去年はよほど嬉しかっただろうな。アルコール度数が14度もあるのに酸度が9。普通は4~5の酸度になるはずなのでそこにボリュームがある。そしてミネラルと酸もしっかり楽しめるゴージャスなワイン。バジルが強烈に効いた緑のバスタともしっかり渡り合える強さ。

③     アンチョビのバターたっぷりなトーストのせ
ワインRundinera2011 (Marsanne)
*名前の意味は燕の巣という意味のローマの方言。燕が巣をつくる崖のすぐそばにある畑で、1988年に植えられたぶどうはたった0,3ha。
このレストランの支配人と出会ったときのエピソードから、その時このワインを合わせたというアンチョビを急きょ用意してもらい満腹のお腹を伺いならがいただく。
トーストにたっぷりしみ込んだバター、そしてアンチョビの濃厚な旨み、強い塩気に全くひけをとらない骨格のしっかりしたワイン。マルサンヌってこんなに強いワインだったの?とろみがあって個性的。スモークした料理にも合いそう。13度くらいで大きなグラス。

④     メインGuazzetto di Pesci e Crostacei dell’Adriatico
ワインCollanima2012(Red Arbana & Centesimino)
*アドリア海のいろいろな魚が入った食べるスープ。鰻?も入っていてすごいボリューム。すでにこれまででノックアウトな私は少し味見程度にいただきました。
合わせたワインは先ほど畑でもいただいたコッラーニマ。スパイシーさが魚介のごった煮にあう。
2012年初リリース。100ヘクトリットルのコンクリートタンクで発酵。3週間のかもし。そのまま発酵タンクにて10か月熟成。さらに瓶熟6か月。17度くらいでのみたいワイン。
⑤     デザート Dolce alla Carta
*長細いお皿に配置された3種のデザート。右は冷たく、左は熱い。皿も同じように温度差があるのが楽しい。食べる以外の楽しみもある食事ってすごく印象にのこるな。

マリアボルトロッティ
July 2nd, 2014

P10004543回目の訪問は、成田をでてから17時間後、日付も変わろうかという深夜。
ボローニャの空港に降り立ったのは生涯2度目。最新のランボルギーニが2台展示してある。かっちょいい~
案内人TAKEによるとフェラーリやドゥカティもこの町が本拠地とか。なんでも勤勉な方が多いらしい。
確かに…ここの当主フラビオはイタリア人らしからぬ物静かさで、たんたんとした方。
いつもそっと微笑んでいるんだな~。

【食べる】深夜なのになぜかお腹がすいていて、夜食タイム決行!
マンマの手作り「トルテッリーニ イン ブロード」はまるでスイトンのような母の優しさ。
合わせたファレスタルもあくまで優しく毛穴がブワーっと広がるような癒し感。
おねだりワインのナスコンデルシも複雑で味わい深く、チョコレートのプリンと相性抜群。
お腹も心も満たされて満足、満足。これでシャワーが水じゃなかったら…。

翌日は時差ボケで当然早起き、当然寝不足ですが、朝ヨガで心身を整えワイナリツアーに出発。
といっても宿泊している同じプロパティの中。
フラビオの家、そしてアグリツリズモの館の裏側に畑が広がっているのです。

って、さらっと書きましたがここがポイント!
家が近い。ということは畑の環境が人々の暮らしに直接影響するということ。
有機農業は環境保全であり、土地への愛情の表れ~そして住んでいるところを守る。
つまりは家族を守るということなんですよね。無理がない。だって当然だもの。
【畑にて】ここはボローニャのコッリ・ボロネージ。すごく暑いエリアで土も粘土層で、とても地力に満ちていると。
3万年の歴史がある土地で、地滑りがおきたこともないパワー大地。
確かにここのワインはパワーあるある。

画像のように高低差がとてもあり、同じ時間でも寒暖差が10度以上あることもあるらしい。
もちろん下のほうに白ぶどうを植えて、上のほうに黒ブドウを植えます。

足で感じる土壌は柔らかく、様々な下草が生えています。
下草をはやす意味はいろいろあるけれど、ここでは土地のパワーを使わせる意味もあるそうで、
すべてはバランスなのだなあと。

ここで飛びだしたのがこのツアーを象徴するキーワード“植物多様性”
畑を取り囲む木々、花々。そして共生する蜂や虫。すべてが少しずつ関わってワインを生み出している。

【ワイナリーにて】相変わらず、「ここかいっ!」と突っ込みたくなるような場所にある醸造施設。
完全屋外というのがいつ行っても仰天。

今回興味深かったのがスターターの話。ちょっと天然酵母パンを作る過程に似ていますよ。
畑のさまざまな場所からいろんな白ブドウをもってきてバケツ!!!で発酵させます。酵母はエリアによって違うので、酵母の種類を多くさせるために、いろんな場所から採取するのだそう。
発酵初めに頑張る酵母に名札がついているわけではないので、たくさん集めてそこから誰かに頑張ってもらおうという感じかな。で、その強力スターターを使ってそれぞれのブドウの発酵を安定させるのです。
通常のワイン造りではセレクション酵母といわれるパウダー状の加工品を使います。だって簡単だし、間違いないし。でも使いません。だってみーんな同じ味にしたくないから。
フラビオが信望するボローニャ大学の農学者チェッリ先生のお言葉『ワインは特定の土地を象徴するもの』。

なるほど。なるほど。     …フラビオが語りだします。
自分のワインはコーラスを目指しているんだよ。ソロシンガーが歌い上げる独唱ではなく、いろんな声がまざって心に訴えかけるようなワインにしたいんだ
でも、フラビオはその複雑さを醸造で作り出そうとはしません。果汁とともに皮を付け込めば複雑さは生まれます。でも彼はそれもヨシとしない。「複雑な味のワインをシンプルに作りたい」「ブドウが本来持っている複雑性や、土地を反映したワインを素直に作りたい
私はこれを全く勝手に“刺身発想”と名付けました。
繊細さと自然さの追及。加工されてはいけない。

【食べる&試飲】心待ちにしていたランチ。ここのマンマの料理は最高ですからね(^^♪

①   前菜Sfogliata du zucchine e fiori di zucca

ワインFalestar(Pignoletto)
*かぼちゃの花のパイのような前菜。ファレスタルのハニーな味すじと合う。泡がきめ細かく心地よいな~
ピニョレットは苦味のある料理と相性がよい。
②   パスタTagliatelle all’ortica con con asparagi
ワイン Mamolo(Pignoletto)2011
*これはすさまじくおいしかった。オルティーカは日本でいうところのヨモギ。またこのほのかな苦味がマモロと抜群。コトトワの野菜焼きにマモロが合うのがわかった気がする。

③   料理Tortiera di patate e asparagi&Ricottine infornate
ワイン Bosco(Pignoletto affinato in Legno)2011
ワイン Eligio(Sauvignon Blanc)2011
*オムレツみたいな家庭料理。とにかく野菜が豊富で癒される。2011ヴィンテージはとにかく暑い年だったらしいが、植物のバランスのおかげでやけた感じにはならなかったらしい。ボスコはこの濃さでしっかり辛口なのがすごいな。エリージョはSBだけどこの蔵を通した一貫した苦味がある。それがこんなに濃いのに後味すっきり感につながるんだろうな。
④   メインCrudita con salsa al basilico&Filetto arrosto in salsa di cipollotti con Patete sal, forono,
Carciofi trifolati.
ワイン Armando(Cabernet s.& Barbera)、Matilde(Barbera)
*肉、パン、そしてサラダ。ここでもアスパラガス。いや~元気でそう。この季節に来れてよかったな。
なんでもボスコはイタリア料理誌で「アスパラガスに合うワイン」として紹介されているらしい。
肉ももちろん赤身でストレスなし。アルマンドは以前カベルネs100%だったけれど、より土地に根付いているという理由からバルベーラを50%入れるようにしたそうですよ。赤ワインはふたつともなかなか濃くて手ごわいけれど、素直でシンプルだから飲める。刺身発想万歳!
⑤   デザートGelo di mascarporne con fragole
ワインDolcedo(Pignoletto)
*こんなに食べたのにデザートまで平らげてしまった。11月末の収穫でデザートワインは貴腐がつくこともあるらしい。フラビオの大好きな音楽をイメージしたラベル。モーツァルトだって。