フランチェスコーニ
July 2nd, 2014

P1000629エミリア・ロマーニャも奥が深いなと実感させられる今回の旅。昨夜の余韻を引きずりつつも、次の蔵元は車で40分くらい。ここも初訪問ということでTAKEから簡単な解説をうけつつファエンツアに向かいます。途中キウィ畑が広がる。初めて見た!でもこのキウィ栽培も長年にわたる農薬や人工肥料の影響で樹が弱り、死んでいる畑が増えて問題になっているらしい。ぶどうに限らずどんな農作物も同じ悩みを抱えています。

当主のパオロさんはもともと農業の専門家、指導者で、とくに農薬のスペシャリスト!だからこそ、農薬が畑や環境に及ぼす害や人間にふりかかる2次被害についても熟知していたと。そんな彼がおじいさんの畑で農薬を使用しないビオディナミコを始めようとしたのは自然な流れだったのかもしれません。

昨日のフォンド・サン・ジュゼッペの畑とは対照的に平坦な土地に降り立つと、そこにつなぎ姿の男性が。
パオロさんです。
笑顔がステキ♡ 頼れる兄貴という親分肌のオーラが出まくっています。

【畑にて】高低差がないので畑歩きも楽ちんです。フワッフワですけどね。
標高は85m。10万年前は川の底だったそうで地表部分は粘土土壌、その下は石灰土壌。水はけがいい土地だといっていました。昨日のステファノさんは水がでてとても困っていたので、同じエリアでも違いの大きさ、微気候を感じます。
畑歩きで楽しい話を聞きました。
もう当然の光景ですが、畑には下草がぼうぼうと生えています。その下草にも生える段階があるらしい。
まず麦科の植物が生え、その次にクローバーが生えます。クローバーはマメ科で空気中の窒素を地中に取り込む作用があります。小さな花をつける植物が生え、その花は3か月ほどで種を持ち、種がついた頃を見計らって耕すと種が地中にはいりそこでも栄養をもたらす。そして最終的に地力が強まったところへミントなどのハーブが生えだし、根っこ同士が近いのでぶどうの香りにも影響が与える。地力を高めると下草の種類が増える→植物多様性の完成です。
へえ~~~~。そうだったのか。

畑のはじにかなりの確率でベビー樫の木が。パオロ曰く鳥がドングリを埋めて、それを忘れてしまう。すると地力が強いから気がすくすくと育ってしまうのだそう。真偽のほどはわからないけれど、畑の真ん中にすでに立派な樫が。これも多様性の一部だそうで、大事にしているそうです。
【食べる&試飲】ご自宅の脇の木陰にテーブルとイスが用意してあり、そこでテイスティング。こんなに暑い日も木陰は涼しい風が通り抜ける。ヨーロッパの素敵なところです。

事前情報で“がっつり赤系蔵元”と聞かされていたような気がして、どうなることかと思っていたけれど開けてみたらアルバーナ(白ブドウ)勉強会。

Luna Nuova(Trebbiano100%)
新月のワインという意味。もうルナってだけでケース買いしたい。しかも新月というネーミングがマーケティング的にもいいと思う。女性が反応する率高し。
ワイン造りはオリ引きしたあとに残る細かいオリとともにボトリング直前まで置く。オリとともにあることでワインが酸化しないことは体験的に昔から知っていたそう。ボトリングの際に100ℓに対して2gのSO2を添加。トータルとして35 ml/ℓのSO2で、これは圧倒的な少なさ。レーズンやパイナップルなどのドライフルーツは200、ヨーロッパの辛口白ワインの平均が150ですから。そして2005年から選別酵母を使っていない。選別酵母を使うとすぐに発酵が始まりすぐにアルコールができるので酢になることは全くないけれど、天然酵母だと3~4日発酵が始まるのにかかるため、ほかの菌がはいりこみ酢になるリスクを背負ってしまう。

ワインは年号違いを3種試飲。2011年は夏の終わりが非常に暑く、2012年は全ての夏が暑かったのでぶどうが早く熟した。2013年は涼しい年だった。ここは平坦な場所なので高温になりすぎることが問題。夏は40度以上という暑さになることも珍しくないらしい。40年前はもっともっと涼しかったよと。今は昔のシチリアの気温だよと。冷静に考えると怖い話です。でも逆に冬場の冷害という心配はゼロ。すべて裏表です。

Vite in Fiore(Albana100%)
なんと足踏み圧搾!そんなの聞いたのはポルトガル以来だな。
アルバーナは果皮が厚い。だから旨みもあるけど苦みも強い。だからあんまりゴシゴシ絞っちゃうとえぐくなるので、考えられる限り一番繊細なプレス機=足でやるのだそうです。アルバーナは強い酸が特徴。酸はワインの大事な骨格、人間でいえば背骨だと私は常々思っています。通常は(例えばトレッビアーノなど)収穫が近づいてアルコール度数が上がると酸度が落ちるのが、アルバーナは落ちない。酸度キープ!しかも暑い夏でも凝縮しすぎることがない。よっぽど、この土地に合っているのだな。なんか古代の王様が愛用した品種的な気品を感じます。

Arcaica(Albana100%)
古代という意味。全く同じぶどうでヴィーテ・イン・フィオーリと正反対のワインを作ろうという試み。ヴィーテが苦味を出さないように足でプレスしたのに、こちらは皮をつぶしてスキンコンタクトもしっかり1か月。とても個性的でマニアックなワイン。ジビエなかもいいんじゃないかな。臭いチーズでじっくり赤ワインのように楽しむのもいいな。温度も17度くらい大きめのグラスで。
ヤギのレンネットを使ったという不思議なコクのあるチーズにものすごく合っていた。白ワインなのに赤のように力強く存在感たっぷりのアルバーナ三昧に感動!

Antiqua(Albana100%)
ついに登場。噂のアンフォラ熟成ワイン。
もはや白とか赤とかどうでもよくてこれはアルバーナワインなのだ。
とてつもなく長い余韻。深く品のある味わい。渋みもあるけれど
なにより心地よい酸が好き。吐き出すのがもったいないワインでした~

Limbecca (Sangiovese di Romagna100%)
赤ワインも少し試すか?と聞かれてもちろん!うなずく。
粒の大きめなサンジョベーゼを使用。粒が大きい=果汁たっぷりで
渋みは少な目という想像できています?
想像どおりシンプルでフレッシュなワイン。酸味がしっかりある。このあたりの郷土料理に合うんじゃないかなと勝手に想像。パオロさんが用意してくれたカルチョーフィ(アーティチョーク)の素揚げにばっちりだった。もちろん土地のチーズにも。

Le Iadi (Sangiovese di Romagna100%)
こちらは少し粒の小さなサンジョベーゼを使っているので、リンベッカよりもやや濃いめ。
でも肩ひじ張ってのむ偉大なワインという感じではなく、あくまで基本はカジュアル。葉っぱに星座が描かれているのがロマンティックだな。
D’incato (Centesimino)
昨日勉強したチェンテジミーノを使ったパッシート。ラベルはクリムト。
ステファノさんといい、パオロさんといいイタリア男はロマンティスト。
甘いワイン好きな私。ちょっと渋みが残るところがいい。
カルチョーフィの苦味ともよくあっていた。これもそうだけれど、ここのアルバーナ3種とかご飯屋さんよりもワインバーで受ける味だな。お客様が喜びそう。

旅のお気に入りショット。
カルチョーフィ→とげがある→私にもとげがある?
→カルチョーフィの女王という有難い称号をいただき晴れてツーショットとなりました。
日本で見るアーティチョークよりもずっと小ぶりで、この時期これを生で食べるのが一番のごちそうだとTAKEが言っていましたよ。
この真実は最終日あきらかに。