フォンド・サン・ジュゼッペ
July 2nd, 2014

P1000541マリアボルトロッティから向かう道すがら、初訪問であるフォンド・サン・ジュゼッペのおおまかなストーリーをTAKEから聞く。TAKEは今回運転手もこなしてくれて本人曰く一人4役。お疲れ様~。

当主のステファノさんはイタリア高級ワイナリー「GAJA」で約10年社長秘書を務めた異色の経歴。
GAJAなら間違いなく給料もよさそうで、普通ならそのまま居座るんでしょうが、この人はあっさり辞めて、イタリア中を歩き、自分の夢を実現する場所をBrisghella-ブリスゲッッラの自然に見つけ2008年に購入。
そのまま現在までガムシャラに突き進んできたらしい。

ワイン造りをする屈強な大男を勝手にイメージしていた私。待ち合わせ場所で初対面したステファノさんは、意外や意外、今でも秘書で通用するくらいインテリジェンス溢れるスマートな人。スキンヘッドで小柄でつるんとした感じ(あとからわかったことですが、私よりも2歳も若い!おお!)。

【畑にて】さっそく畑へGO!
登る、登る。これでもかというくらい車で登って山頂に降り立ち、丁寧な解説を受ける。トスカーナの州境から10キロのところ。「シンプルでスペシャルではないが本質的なものがすべてある」ところが気に入ったのだと。

「じゃあ、少し畑を降りてみましょう」と歩き出すステファノさんの後を、お、追えない!だってものすごく急な畑で転びそう。昨日会ったばかりのツアー同行者の腕をつかみ必死にあとを追います。
ここで作業するのは並大抵でないな。雨がふったら悲惨だな。
高度は350m~400m。北向き斜面はもう当たり前か。全方位を森に囲まれていて、作るブドウは90%白。
白が土地にあっていると。全17.5haのプロパティで畑は4,5haだけ。12haは森で、その他1haは何も植わってない土地。これから少しは増やすけれど限界まではやらないと。とにかく森が占める割合がものすごい。でもそれが大事で、それがすべて。

ここの畑で聞いた面白い話。
ブドウを剪定しますね。すると切り口は人間でいえば傷口。人間同様、ぶどうにも自分の傷口を治す力はあります。でも時間がかかる。治りきらないうちに冬になり雨がふるとそこから水分が樹に入り込み、凍って樹が割れることがある。割れたところから病気が入り樹が死んでしまうことがあるのだそう。それを防ぐために、剪定部分=傷口にプロポリス+銅をまぜたお薬を塗ってあるのです(左から2番目の画像参照)。まさに知恵と愛情。やるなあ。

30分ほど歩くと畑の突当りにテーブルとイスが用意してある。
まさか!そこで!!眺め抜群。すぐそこは崖。
なんというロマンティックなシチュエーションでしょう。
私がいうのもなんですが女なら100%落ちる。崖から落ちるのではないですよ、恋におちる。
ツアーメンバー唯一の独身N氏に熱心にここで口説くように薦めました。

いただいたワインはCollanimaコッラーニマ ~心をこめて~という意味だそうで、憎い。にくいなあこの人。
しかもグラスがリーデルのソムリエシリーズ。何千円というグラスです。それをこんな山の中で使うとは。
なんでもGAJAの社長から退社時に贈られたそうで、「コルクとグラスは最高級を」というのが社長の教え。今でも社長一族とはお付き合いがあるそうで、ステファノさんの人柄とセンスがうかがえる話。
品種はレッドアルバーナと古代から植えられていたというChentesimino-チェンテジミーノ。たった0,3haの完璧に森に囲まれた畑です。収穫時期に雨がふり、収穫自体をあきらめることもあったそう。
例えばトレビアーノでもここでは1haあたり4トンしかワインはできない。地力が弱いし、肥料もいれないので。
平地でふつうに肥料をあげて作るとこのあたりなら1haあたり20トンのワインができる。でも土地の本来もっている条件を変えるべきではないというのが彼の信念。

森との共生・調和がテーマ。
さきほどのお手当のお薬の話からもわかるように、すこ~しだけ森を整えてあげることでうまく共存している。

新しいものはいつも古いものから生まれる。古いものを大切に、そのまま生かそうとしているうちに新しい発見があるそうで、日本の「温故知新」にもつながる彼の世界観

さて、ステファノさんが紹介してくれた宿はこの旅一番のおしゃれなホテルで、そのメインダイニングで夕食をいただきながらその他のワインをテイスティングすることに。

【食べる&試飲】世界には知らないところがまだまだある。グリーンハウスのようなレストランにてAbbinamento-アッビナメント(料理とワインの組み合わせ)を楽しみます。

①小さな前菜 Cinque Cucchiai
ワイン

②前菜 Fiori di Zucca in Tempura e Salsa Agrodolce
ワイン Tera2013(Trebbiano)
*お馴染みのズッキーニの花に具をつめて天ぷらにしたもの。3個もでてきて先が心配になった。彼は2013の白ワインが素晴らしい出来あがりになったことをとても喜んでいて、最高の年と。気候のバランス、昼夜の気温差があり、雨も適度で香りも飛ばなかったと。
ラベンダーの香り。石鹸みたいな香りも。酸味と塩っぽさがあり好きなワイン。シンプルなのがいいな。3月19日にボトリングしたばかりと言っていたので、日本に届いてからまた飲みたい。

①     海老 Mazzancolla Scottadito al Sale Dolce di Cervia
ワイン Esor2013(Chardonnay80% & Rose muscat)

*エゾールはロゼの反対読み!わからなかった。シャルドネ主体のロゼワインというのがすでに個性的。4列しかないモスカートローザがこの色を与えているのか?
花の香り、そしてシトラス系のフルーツ。ミネラルも。生き生きした酸味が爽やかなワインで、この酸っぱさがいいな。焼いた海老との相性抜群。

⑤ 料理Ranfa di Polipo alla Brace,Spuma di Patate e Polvere di Cappero
ワイン Caramore2013(Chardonnay)
*マッシュポテトの上にタコが乗った料理。なぜかこれも3個づけ。ワイン名の意味はDear LOVE。2400本のみ。とても地力の弱いライムストーン・クレイの土壌なので常に収量は少な目。約2トン。でもその分、ぶどうは凝縮されて香り高い。温度管理をせずにコンクリートタンクにて発酵。樽は使わない。シャルドネについてステファノさんは「こんなに普及しているのに、こんなにいい品種なんだよ」と。畑に太陽があたるのは涼しい時間だけ。そんな過酷な状況がこの豊富なアロマを生み出すのね。本当にいい香りで癒される。こんなシャルドネならいつでも飲めるな。

②      パスタChitarra al kamut con Pesto, Cornetti e Patate
ワインCharla2013&2010(White Riesling)
*リースリングがうまい。やはり2013の仕上がりに大満足なステファノさん。2008年は売ってしまい、2009       年は貴腐がついてしまった。2010年は寒かったので早くつんでみたと。試行錯誤してきただけに完璧な気候だった去年はよほど嬉しかっただろうな。アルコール度数が14度もあるのに酸度が9。普通は4~5の酸度になるはずなのでそこにボリュームがある。そしてミネラルと酸もしっかり楽しめるゴージャスなワイン。バジルが強烈に効いた緑のバスタともしっかり渡り合える強さ。

③     アンチョビのバターたっぷりなトーストのせ
ワインRundinera2011 (Marsanne)
*名前の意味は燕の巣という意味のローマの方言。燕が巣をつくる崖のすぐそばにある畑で、1988年に植えられたぶどうはたった0,3ha。
このレストランの支配人と出会ったときのエピソードから、その時このワインを合わせたというアンチョビを急きょ用意してもらい満腹のお腹を伺いならがいただく。
トーストにたっぷりしみ込んだバター、そしてアンチョビの濃厚な旨み、強い塩気に全くひけをとらない骨格のしっかりしたワイン。マルサンヌってこんなに強いワインだったの?とろみがあって個性的。スモークした料理にも合いそう。13度くらいで大きなグラス。

④     メインGuazzetto di Pesci e Crostacei dell’Adriatico
ワインCollanima2012(Red Arbana & Centesimino)
*アドリア海のいろいろな魚が入った食べるスープ。鰻?も入っていてすごいボリューム。すでにこれまででノックアウトな私は少し味見程度にいただきました。
合わせたワインは先ほど畑でもいただいたコッラーニマ。スパイシーさが魚介のごった煮にあう。
2012年初リリース。100ヘクトリットルのコンクリートタンクで発酵。3週間のかもし。そのまま発酵タンクにて10か月熟成。さらに瓶熟6か月。17度くらいでのみたいワイン。
⑤     デザート Dolce alla Carta
*長細いお皿に配置された3種のデザート。右は冷たく、左は熱い。皿も同じように温度差があるのが楽しい。食べる以外の楽しみもある食事ってすごく印象にのこるな。